(2020/6/2) 洋上風力最適地は北海道と東北。特に北海道は4面海に囲まれ日本一の環境。しかし、北海道は、電力需要の少なさでもトップ。ずぶ素は系統接続を問題視するが、接続後のことに気づく能力が無い。需要が少ない北海道では、出力抑制でバタバタと、落雷に見舞われる前に倒れていく。経産省主導の「超過分切捨」制御方式は、エネルギー資源に乏しい日本には相応しくない。我が国を活性化させる「超過分を生かす」グリッド・ストレージ方式に切り替えれば、北海道の第4次産業として「洋上生まれの激安電気」で北海道が活気づく。さもなくば、太陽光発電を道連れに、「再エネ墓場」で哀れな景色を見ることになる。参照 ⇒⇒ 洋上風力が、日本の主力電源になるのか?
![]() Ⅰ.洋上風力ブーム到来? 1.風力発電の系統接続の申し込み急増 2019年になってから日本全国で風力発電の申し込みが急増している。2018年の「再エネ海域利用法」が成立したのが後押ししているようだ。 その件数(容量)たるや、稼働中容量の24倍で、合計容量が10,000万kWを超える。その中で既に電力会社と接続契約が完了しているのは2,000万kW弱で、残り8,000万kWの契約が認められるかどうかは暫く見守らなければならないが、非常な急増である。 ちなみに、太陽光も確実に申し込みはあり、現在稼働中容量5,500万kWと同数の5,300万kWで、その内訳は契約済みが3,000万kW、検討中が2,300万kW である。 2.洋上はどれだけあるか? 電力会社が公表している資料には洋上と陸上の区分がないので、どれだけが洋上であるかは不明である。 実際に、電力会社別に風力新規分の多い順は、東京(3,300万kW)、東北(1,800万kW)、北海道(1,200万kW)と学会の資料にほぼ一致している。 (東京が多いのは、東京電力自身の洋上風力投資のほかに、供給域外の新潟と福島に稼働していない原発用の高圧送電線があり、それを東京地区の再エネとして利用することになったので、そこの洋上を引き込む可能性もある) 九州と中部が1,100万kWとなっており、それ以外の関西、中国、四国、北陸は200万~400万kWと少ない。 3. 北海道電力への接続検討申し込み状況 北海道電力の再エネ稼働状況と今後の増加予定が(図1.2)である。現在稼働中の合計が432万kWであるが、それが数年後には4倍以上の1,846万kWになる可能性が高い。一番大きく増加するのが風力で、26.7倍の1,288万kWとなる。 時間当たりの最大需要が516万kWhである北海道では、風が少し吹いただけで、しかも風力だけでピーク需要を超えてしまう、はたしてどの程度の出力抑制となるのだろうか?まさか、九州本土のようにはならないことを祈りたいものである。 北海道の再エネの主力電源化がうまく行くかどうかをシミュレーションする前に、北海道の再エネ推進環境を他の地域、東京及び東北と比較してみよう。 2019年度1年間の電力需要は東京が最大で289TWh、次いで東北で75TWh、東京の4分の一程度である。一番少ないのが北海道で、東京の10分の一近くの30TWhである。東北の半分以下となっている。 再エネの一番人気の太陽光だが、太陽光はパネルを設置する土地が必要となる。 3社供給域の土地面積を比較すると一番多いのは、北海道で東京の5倍近い広さ。次いで東北であるが、東北は東京の3倍近い土地を持っている。太陽光導入推進にとっては、東京は不利な環境にあるといえる。しかし、東京は北海道の10倍の需要を、5分の一の土地で実現しなければならないことになる。 洋上風力は、発電に適した強めの風が必要であるが、風の強さの前に沿岸線が長いかどうかも重要である。沿岸線を比較すると、四方を海に囲まれた北海道が一番有利で、その距離は4500km近くあり、三方を海に囲まれた東北の3500kmを1000kmも差をつけている。一番沿岸線が少ないのは東京で、900kmに過ぎない。 ![]() Ⅱ. 九州で行われている出力抑制の現実 経産省主導の「超過分切捨」制御方式 九州本土で行われている抑制制御は、経産省が主導している「超過分切捨方式」である。この方式の採用で、実超過分以上の切り捨てが行われている。(図2.1)実超過分以上になる原因は、予測値の低信頼度対策として安全性を確保する必要があり、実際の過剰分の2倍以上を「捨てる」方式となっている。 結果、太陽光と風力発電所の年間売電収入が、将来は50パー以上減少すると当サイトは予測している。 もう一つの問題は、供給過剰になり始めると再エネ化率はある率以上にはならないことである。太陽光だけなら30パーが限度、原発が稼働すればそれ以下。「エネルギー計画」では2030年代の日本の再エネ化率は22~24パーと言っているのは、その限界を考慮しての数値である。限界が分かっているのに、「再エネの主力電源化」は矛盾した宣言である。まさに国策詐欺としか言いようがない。 ![]() Ⅲ. シミュレーション実施 (1)シミュレーションのやり方 ●使用する元データー 北海道電力の2019年度電力需給実績データー ⇒ 365日 × 24時間の総需要量と電源別発電実績 将来の発電量とする。 ●稼働中と申込等の倍率 現在すでに承認済と検討申込の全てが稼働した時を想定して シミュレーションを行う。容量は現在432万kWの再エネが4.28倍 の1,847万kWになった時のシミュレーションである。 (2)シミュレーション結果 ●月別発電、抑制状況表 大量の風力の導入にもかかわらず再エネ化率は44.0パーにしかならなか った。再エネの主力電源化は未達である。(図3.2) 未達の最大原因は、風力発電の出力抑制が大量に実施された為である。 本来の発電量の4分の3(75.5パー)が発電禁止になっている。 この抑制が無かったら、風力だけで一年間の需要を満たせる発電が出来 ていた。 太陽光も60.7パーが発電禁止となっている。 太陽光と風力の発電業者は大幅な収入減となる。 ●グラフ化 (図3.2)をグラフ化すると(図3.3)になる。 太陽光も抑制されている(黄) 以上の切り捨てになる。そのことがこのグラフを見てもハッキリと見 て取れる。風力の切り捨てが需要ライン(赤破線)を超えているため、 切り捨て部分が多すぎて需要を満たせなくなる。そのため揚水発電を フル稼働させるなど、お粗末すぎる。 (図3.3) (3) 各発電所が被る被害 ①発電禁止回数 4分の3も発電禁止にした場合、何回の発電禁止命令が出されたか、 各発電所は何回の発電禁止命令を受けたか? 発電禁止は、昼と夜に出される。昼は太陽光と風力が対象になるが、 夜は風力だけが対象となる。風力は一日2回発電禁止になることも ある。 抑制率とは、1回の発電禁止命令が出された時、何パーセント(容量 比) の発電所が対象になるかの指数です。-1.000とは100パーの意味で す。100パーで全発電所が1回づつ停止させられた事を意味する。 4月の昼が-18.464とは、一つの発電所が4月に18.464回の停止命 令を受けたことになる。昼は太陽光と風力発電所が停止するので、 4月は太陽光と風力が昼に18.464回停止したことになる。 夜は風力だけ停止するので風力は昼の18.464回と夜の12.666回停止 する。 1年間にセンターは停止命令を昼に292回、夜264回発令した。 各太陽光発電所は225~226回停止し、風力は昼に225~226回停止 し、更に夜は202~203回停止させられている。 (図3.4) ②売電収入減 太陽光の一日当たりの発電量は365種類あるといっても過言ではな い。多いものから順に並べると緩やかなS字カーブを描く。 (図 3.5)北海道全域が晴れの時は発電量が多く、雨の時は少ない。S字 カーブの左側は晴れの時で、右側は雨の時である。 供給過剰になるのは北海道全域が晴れの時で、雨の時はなりにくい。 従って、225回の停止はS字曲線の左側から225個付近が該当する。決 して右から225個ではない。(図3.5)で左から225個は減収率は80 パー程度となる。ちなみに右から225個では50パー程度である。大き な差である。 (図3.5) 風力も発電量の多い日も少ない日もある。昼の発電停止は、太陽光が原 因、風力はほんのわずかの発電であっても停止される。夜は風力の発電 量が多いがために停止されることもあるが、深夜の需要が極端に少なく なり、且つベース電源の影響で風力が停止されることも多い。 そこで、当スマートセンターでは風力の収入減は、弊社が計算した(図 (4)日別発電と抑制の詳細 日単位の稼働状況を詳細に見てみよう。 ①3/25~3/31の1週間の発電状況 ★3/25~3/31の札幌気象台の観測値(25日~31日の順に記す) 気温 平均 4.0~7.4 最高 7.2~14.1 最低 -0.6~2.9 日照時間 11.5、9.7、3.2、6.0、11.7、11.8、10.2 昼の天気 快晴、晴一時曇、曇後雨、晴一時曇、薄曇、快晴、晴 積雪(cm) 16、10、5、―、―、―、― 平均風速(m/s) 4.2、3.1、6.5、5.9、3.1、2.0、3.8 ★火力;26日の夜だけ下限値を超えて発電、それ以外は下限値の発電 ★水力、地熱、バイオでベースとなり700~800MWを発電 ★揚水;最大値540MWを出して過剰分を吸収 ★太陽光;ベースの上で需要ぎりぎりまで発電 ★風力;26日の夜以外は前日供給過剰の発電、最大日28日5時 10,077MWh、最大供給過剰28日14時9,144MWh ②経産省方式で抑制処理 実超過分以上の切り捨て(白)となっている。 ③切り捨て後の不足分補充 需要を満たせなくなった部分に対して火力と揚水発電と他社からの支 援で何とか逃げ切っている。 バカの見本と言える制御方式である。 ![]() Ⅳ. 洋上風力の能力を発揮できるか? (1)発電実績から見える風力の設備利用率 2019年の発電実績から風力発電の設備利用率を分析した。 分析結果を(図4.1)にまとめている。これを見ると北海道の風力は、2019年時点ではすべて陸上風力であったが、年間の設備利用率が28.0パーセントと、陸上にしてはかなり高い利用率になっている。 これが洋上になると40パー以上になるのであろうか? (2)洋上風力の能力適応 洋上風力の設備利用率を適応すると、(図3.3)のグラフは(図4.2)になると容易に想像できる。利用率が高くなっても、抑制部分(白地) が増えるだけで発電業者の収入も、再エネ化率も高くはならない。 増えるのは発電業者の赤字と倒産だけではないだろうか? 洋上風力のメリットが,全く出ない💀💀 出るのは倒産だけ!! 北海の洋上風力は、落雷や津波の前に倒れてしまう。 ![]() Ⅴ. 何故?、ではどうする? (1)東京、東北、北海道の月別需要比較 (図5.1)を見ると、月別需要は、東京は北海道の10倍、東北は2倍。東京や 東北程の需要が北海道にあれば、供給過剰にならずに発電できるのに、残念。 せめて、東北ぐらいの需要が欲しいものである。 月間需要量と月間発電量で比較するのは大まかな見方には最適かもしれないが、 現実は時間帯で同時同量を比較すべきではないかとのご指摘、ご尤もということで次に3/25~3/31までを時間別に比較してみよう。(図5.2)で時間別比較した。 日別の需要量と発電量で詳細を見てみよう。 (図5.2)は3月25日~3月31日までの時間別発電量と、東北と北海道の時間別需要を表示している。北海道の需要では再エネの発電は、7日間全部が供給過剰になっている。しかし、東北の需要で見ると3月28日だけは一部供給過剰に見えるが、これは太陽光にHBBS適応と、揚水発電の発動で需要以下に収めることができる。 東京の需要だったら、北海道の再エネ発電は供給過剰になる心配は全くない。 北海道の洋上風力の能力を引き出すためには、東京の需要とまではいわないが、せめて東北の需要は欲しいものである。 北海道は洋上風力最適地と言われているが、それは強めの風が年中吹いているという点だけで、受け入れ能力という面では、不適切地であることがこのグラフから明確に断定できる。受け入れ能力という面では、なんといっても東京が最適地である。 しかし、この考え方は、経産省主導の「超過分切捨」制御方式で考えた場合であって、「超過分を生かす」グリッド・ストレージ方式に切り替えれば北海道も最適地になる。 エネルギー資源の乏しい我が国の事情を考えると、経産省主導の「超過分切捨」制御方式は、日本人の命と財産を守る考えが全くないデタラメ政策である。 (2)洋上風力の能力を生かすには何をやるべきか? 考えられることを列記する。 ①導入を完全に中止する。 ②系統接続なしで発電即水素製造方式に切り替える。 ③「超過分を生かす」方式が稼働するまで導入を延期する。 (3)「供給過剰分」を生かす 「供給過剰分」も生かす系統制御方式があれば、需要の少ない北海道でも大量の洋上発電を導入できる。行き成りこの方式を説明する前に、この方式を支える「安定給電保障システム」の設計思想から説明する。 (経産省の「切捨制御方式」には、この全体的な設計思想が存在しない。行き当たりばったりの方式に過ぎないため、段々とボロが出始めたのである) ①「安定給電保障システム」の設計思想 ②安定給電保障・調整力保障 天気に左右される発電量を、事前に保障した1年間の保障値通りに供給することを保障する。1年間の発電量(保障値)は、発電実績や予測から事前に決めておく。滑らかな変化を作るため月を3旬、年36旬に分けて設定しておく。 これにより、太陽光をベースロード電源として使用可能となる。 (図5.5)は東京電力の場合で、旬別平均値実績から作成した保障値は下図の通りである。 (図面をクリックすると拡大します) 保障値通りに保障するとき、実発電量との過不足調整にグリッド・ストレージ(GS)を使用する。過不足の量如何でGSへの保存量が大きく変化する。 (図5.6)は東京電力の7月~9月までの太陽光の日々の発電量(棒グラフ)に対して保障ライン(赤破線)多い時はGS(黒太線)へ保存し、少ない時はGSから補充(黄色)する。太陽光の発電量が少ない時はGSの量が少なくなり、逆の場合は増えているのが見て取れる。 これにより太陽光発電は天気に左右されずに安定供給されるため、火力発電の「空だき」が減少し、火力発電などをバックアップ電源として保存しておく必要性が少なくなる。 参照 ⇒⇒ 給電保障 ⇒⇒ 新たな問題点 ⇒⇒ 放電量の安定化実施結果 ③グリッド・ストレージ機能を「過剰分を生かす」制御技術に使用 GSを北海道に適応する。(図5.7)は供給過剰で捨てられていた大量の電気がGSへ保存されている姿のグラフである。 経産省の「切捨方式」で切り捨てられていた「供給過剰分」を、GSへ保存する。保存された電気は、夏場の風力の発電量が少ない時に取り出して使用したり、液体水素にして海外に輸出したりできる。夢のある展開となる。 GSは膨大な蓄電量になる。 そんな蓄電池があるのか? そのコストは、だれが負担するのか? ④これがグリッド・ストレージだ!! ◉GS蓄電量の変化 GSの蓄電量は日単位に変動する部分と、月単位にゆっくりと且つ大きく変化する部分と2種類がある。日単位の変化は+200GWhからー200GWの範囲で動き、月単位では通常は+4000GWhから+6000GWhの範囲で変動するが風が強くなる春には+10,000GWhまで高まることがある。 (図5.8)は東京電力の例で、桁が一桁ぐらい北海道より大きいが、大きな動きと小さな動きをサンプルとして見て頂きたい。 (図5.8) ◉これがグリッド・ストレージだ!! 🌸🌸🌸 再エネ主力電源化時代は、電気は貯めてから使う時代になる 🌸🌸🌸 🌸🌸🌸 GSを中心に自動車業界、石油業界、電力ガス業界等が大変革🌸🌸🌸 🌸🌸🌸 「過剰分を生かす方式」でエネルギー産業の産業革命だ!! 🌸🌸🌸 GSが充実すると、大災害に強くなり、 ブラックアウトは起きなくなる 最後までご精読ありがとうございます。ご質問、ご感想、反論等 ozaki@smart-center.jpまで直接お送りください。 |