(2019/11/25) 急に増えた風力発電接続申込
申込と契約済み合計の多い順に並べると、
東京 47 ⇒ 3159、東北 157 ⇒ 1603、中部 38 ⇒ 1374、九州 57 ⇒ 1016、
北海道 44 ⇒ 957、中国 35 ⇒ 510、四国 26 ⇒ 316、関西 12 ⇒ 301、北陸 16 ⇒ 209
(電力会社名 現在稼働中の風力発電の容量 ⇒ 申込と契約済みの合計、単位;万kW)
(1)最近(2019年9月現在)の再エネ接続・申込状況 今年(2019年)9月末時点での、日本全体の稼働中及び申込または承認済 みの容量を各社のHPから調査した結果が(図3.1)である。 この状況を見て最大の驚きは、風力が跳び抜けて多くなったことである。 最も多くなった地域は東京で75倍、次は中部で36倍、3番目が関西で25倍 となっている。最低でも東北で10倍となっている。東北が低い理由は、現 在すでに風力が日本で一番稼働しておりその量は157万kWとなっているか らである。 補足しておくが、風力が増えたから太陽光は増えていないのではない。太 陽光も順調に増えている。例えば、東京と東北が2.6倍、次いで中国が2.5 倍、一番増加の少ないのが九州で1.4倍となっている。 なお、各社のHPに掲載されている数字からは、洋上風力か陸上風力かの区 別は不明である。 地域 (図3.1) (2)全てが稼働した時、再エネは主力電源になれるか? 東京は? すべてが稼働した時、日本は再エネが主力電源になっているのか? 出力抑制だらけで、主力電源には程遠いのでは? 全地域の再エネ化率の計算をする予定だが、まずは東京の再エネ化率 から計算する。 東京は稼働中合計が2,268万kWで、内訳は太陽光が1,383万kW、風力が42 万kWだが、検討申込が稼働中容量の2倍4,543万kW、契約済みが1,354万 kwもある。申込済みと契約済みの全てが稼働すると現在稼働中の4倍弱の 8,165万kWになる。この容量は九州で稼働中容量の7倍近い量である。 申込中最大のものは風力で2,910万kW、現稼働中風力の75倍もある。太 陽光の申し込みも相変わらず多く、現稼働中太陽光の2倍弱2,218万kW あり、稼働すると太陽光だけで3,601万kWになる。 ☆稼働後の心配事 ①申込・契約済のすべて8,165万kWが稼働した時、再エネは主力電源に なっているか? ②出力抑制はどの程度発生しているか?売電収入にどの程度影響があるだ ろうか? ③これだけの再エネが稼働し始めたら、再エネの導入は終わってしまうの ではないか? ☆1年間のシミュレーション設定 出来るだけ直近のデータを使用してシミュレーションを行うという趣旨 で、2018年11月から2019年10月までの東京電力の電力需給実績を使用 した。 シミュレーション上、重要なこと ●1時間ごとに同時同量を成立させる ●1年間同じ気象条件とする。太陽光も風力も同じ比率で発電する ものとした。 ●再エネの導入容量は1年間通して、現接続済と同じ容量とした。 ●出力抑制には火力発電の下げ代が大きく響くが、現在実績1,355 万kWよりやや少ない1,200万kWとした。水力は最低44万kWとし た。 ●出力抑制対策として、連携線を利用してた電力会社に超過分の処 理を依頼する手法を九州電力などで採用されているが、東電の場 合はあまりにも量が多すぎるので引き受け手がいないため、抑制 処理とならざるを得ない。 ●原発は現状のままで非稼働とした。連携線は地産都消と考え、現 状の数量を利用した。 ●実績の風力は陸上風力である。しかし将来は洋上風力が主力と 推測しているが、陸上風力の実績データーを利用した。 (陸と海では風力発電効率にかなりの差がある) ☆1年間のシミュレーション結果(図3.2) 1年間のシミュレーション結果は(図3.2)である。 ●水力を含む再エネ化率39.3パーセント、水力を含まずでは35.7 パーセント。主力電源には今一歩である。 ●内訳をみると太陽光で年間発電量が328億kWで再エネ化率11.5パ ーセント、風力で年間発電量が666億kW、再エネ化率23.4パーセ ントとなる。風力が太陽光の2倍で太陽光を追い抜いた。 ●太陽光の容量(3,601万kW)と風力の容量(3,159万kW)は、ほ ぼ同じであるのに、年間発電量は風力が太陽光の2倍以上となっ ている。この原因は太陽光は一日7~8時間の発電しかしないが、 風力は24時間発電出来る事からくるものと推測している。 風力が洋上であれば、風力はさらに大きくなる。 (図3.2) (図表をクリックすると拡大します) ●ついに出ました出力抑制!! 東京電力には出力抑制は発生しないという都市伝説もついに破れ ることになる。年間の抑制量は太陽光で86.8億kW、太陽光発電の 20.9パーセントが捨てられる。従って発電業者は年間収入の20.9 パーセント減となることを覚悟しなければならない。 風力発電にも抑制が発生し、抑制量149.0億kWで風力発電の18.3 パーセントの収入減なる。 ●FIT買取価格で太陽光と風力の投資効率の比較 風力発電が全て洋上風力であればFIT買取価格は36円/kWで あるから、抑制されなかった部分の買取金額は2兆3,976億円とな る。風力の設備容量は3,159万kWであるのでkW当りの1年間の収 入は75,900円/kWとなる。(陸上風力は18円/KW) 太陽光は入札制で、12円/kWで落札したとすると太陽光の抑制 されなかった分の買取金額は、3,936億円となる。 太陽光の設備容量は3,601万kWであるのでkW当りの1年間の収入 は10,930円/kWとなる。 風力発電のKW当たりの収入は太陽光の7倍の投資効果となる。 ただし、調達コストは除いている。 この7倍だけを見ると、今後の再エネ拡大は、洋上風力にシフト させようとしている経産省の誘導作戦が見えてくる。 ●抑制による損失を金額換算すると? 抑制された分を金額換算すると5,365億円、20年間続くとすると 10兆円以上が空しく消えていく。 太陽光の抑制分は、12円/KWで計算すると1,041億円/年とな り、20年間で2兆円となる。 ☆稼働の見える化 1年間の太陽光と風力の稼働状況を図にしてみる。(図3.4) 風力の発電量は太陽光の2倍で、冬の発電が多く、夏は非常に少ない。 太陽光は5月~8月にかけて発電量は多い。5月は需要量が少ないため 出力抑制が多い。風力の出力抑制は、昼より夜間のほうが風が強く、 電力需要は深夜は少ないため、深夜に需要超過になりやすい。 正午近辺は太陽光の発電が多いため、太陽光と風力が同時に抑制され ることが多い。 (図3.4) (図表をクリックすると拡大します) ☆5月ゴールデンウィーク期間の稼働状況 この期間は需要が少ないので需要超過になることが多い。 東電は超過分を自社だけで処理しなければならないのでその対策とし ては、まず第一に火力発電の下げ代を極限ぎりぎりまで下げ、揚水発 電を能力一杯働かせる。水力発電も流水式以外はすべて止めるなどを 行う。それ以上、処理しきれないものが出力抑制の対象となる。 (図3.5)はゴールデンウィーク期間の稼働状況の見える化である。 出力抑制されている部分は太陽光が(白)、風力が(濃緑)である。 毎日かなりの量が抑制されているのが見て取れる。 (図3.5) (図表をクリックすると拡大します) ☆出力抑制の多かった一日の詳細 抑制の多かった4月6日の詳細が(図3.6)である。 白色の部分が抑制された部分で、太陽光が発電している時間帯は 太陽光と風力の両方が抑制されている。同時間帯で風力の(緑)部分 は揚水発電で対応しているので需要超過にはならない。 その上の(白)は風力の揚水で対応できなく抑制になった量である。 風力と太陽光の抑制率は公平の原則に乗って行われる。 詳細は「風力と太陽光の出力抑制方法」に記述してます。太陽光が発 電していない深夜などの時間帯は風力だけが抑制される。 ☆東京電力の需要超過はいきなり抑制しかない 前述の出力抑制は、九州電力であれば連携線を使用して他電力に送っ て処理をしてもらっているので、需要超過分のすべてが出力抑制には なってはない。 東電も超過分をどこかに送って処理してもらえれば、抑制量が少なく なるのではないか? 確かに受け取ってくれるところがあれば抑制量も少なくなる。しか し、どこか受け取ってくれるだろうか? 今回のシミュレーションの中で大きな超過は、(図3.6)に掲載して いるが、4月6日に太陽光と風力合わせて2,500万kW/時であった。 この量を処理出来るところがあるか? (図3.3)に主要電力の処理能力を表示している。例えば、関西は夏 のピークが2,865万kWを処理しているが、春秋の平均的な日は1,700 万kW程度の処理である。そんな関西に2,500万kWの処理をお願いし ても受け取ってもらえないのは自明の理である。 ちなみに、現在出力抑制を頻発している九州電力が、連携線経由で中 国電力に送った最大値は1年の内で253万kWであった。関西は北陸と 四国から受け取っているので受け取り可能量は400~500万kW程度で ある。 (図3.3) (図表をクリックすると拡大します ●40パーセント以上の再エネ化率の実現は困難 将来、太陽光と風力の導入拡大で、同じ手法で40パーセント以上 の再エネ化率を高めようとしても、実現困難であることは論理的 に推定できる。なぜなら、導入量が増えても、増えた分は出力抑 制に回されるだけであるからである。そのことは九州の実績で証 明されている。 将来、風力と太陽光を増加させても、増加分のほとんどが抑制 されるだけであることは覚悟しておくべきである。 (3)出力抑制は弊社のHBBS使用で解消できる 🌼🌼 太陽光の抑制解消で、風力も解消される 🌼🌼 ☆太陽光発電に対してHBBSを適応すると抑制にならない理由(注) (風力には適応しない理由) 太陽光発電は南中時に発電量が最大になる特徴がある。その集中が原 因で南中時近辺の時間帯に需要を超過する。 風力発電には発電が集中する時間というものはない。一日24時間のど の時間帯に発電量が多くなるかは、その時の風次第である。 太陽光と風力のもう一つの違いは、一日の発電時間帯が太陽光では 7~8時間しかしないが、風力は24時間ある。このことから一日分の発 電分を蓄電池に蓄えようとすると風力発電はとてつもなく大容量にな ってしまう。 以上2つの理由から太陽光だけに蓄電池(HBBS)を使用する。蓄電池 に溜まった電気を翌日の運転開始時刻から24時間かけて均等量で放電 する。その時間当たり放電量は南中時の発電量の4分の一程度になる ため出力抑制も発生しにくくなる。(注) ☆稼働シミュレーション環境の設定 前述のシミュレーションとの違いだけ述べる。 ●全太陽光にHBBSをセットで導入するとした。 ●前日に発電した電気をHBBSに保存した後、翌日の午前ゼロ時から 24時間かけて均等に放電する。 ●柏崎原発の5,6号機が稼働するとして毎時270万kWを組み込む。 ●HBBS使用により太陽光の不安定さが解消されるので、火力の最低出 力を600万kWまで下げることが可能とする。 ●揚水と連携線の使用量は前述のシミュレーションと同じとする。 ☆HBBSを使用した場合の稼働シミュレーション結果 ●HBBSを使用した時の1年間の稼働結果は(図3.7)である。 水力を含む再エネ化率は7.6パーセント増えて46.9パーセントとなっ た。 ●連携線の処理は東北電力の再エネの超過分と考えると、この処理は東 電にとっては再エネの処理と考える事も出来る。その分も再エネ化率 に加える東電の再エネ化率は57.2パーセントとなる。 この率であれば、再エネが主力電源と言える。 ●太陽光の出力抑制は完全に解消し、年間発電量が417億1,801万kWと なった。 驚くべきことは、HBBSを使用していない風力まで出力抑制が減り発 電量が増えたことである。HBBSを使用していない時、666億1,748万 kW(23.4%)だった発電量が、136億3312万kW増え、802億5,060万 kW(28.1%)となった。増加分を36円/kWで計算すると4,907億円強と なる。風力の出力抑制は149億kWあった抑制量が、12億kWと減少し ている。 ●5月ゴールデンウィーク期間の出力抑制 HBBSを使用すると、出力抑制が頻発するゴールデンウィーク期間 (図3.5) でも、ほとんど発生しなくなる。(図3.9) (図3.9) ☆風力と太陽光の出力抑制方法 風力発電まで出力抑制が激減する理由を説明する前に、まず、抑制がど のように行われるかを2つの時間帯に分けて説明する。 (図3.8) ①太陽光が発電する時間帯での抑制方法 太陽光の特性として南中時に最大の発電を行う。その時間に風力の発電も 多かったとすると、風力と太陽光を合わせた量が需要超過となる(図3.8) その時、同時同量にするために超過分を抑制しなければならないが、抑制 量は何らかのルールで太陽光と風力を案分して両者を公平に抑制する。 (揚水発電や火力下げ代調整も事前に行う) 南中時の最大超過量は3,000万kWあり、ここのルールは2等分という事であ ったので、太陽光と風力で1,500万kWづつ抑制処理した。 ⓶太陽光が発電しない時間帯での抑制方法 この時間帯の需要超過は風力しかないので、風力のみの抑制処理となる。 (揚水発電や火力下げ代調整も事前に行う) ☆HBBSを使用すると太陽光の出力抑制が激減する理由 ①24時間均等放電で南中時の最大出力が4分の一近くまで減少する。 (図3.8)で南中時の最大出力は2,570万kWであるが、前日分の放電量 が時間当たり745万kWであるため1,825万kW減少する。 これにより需要超過の可能性が大幅に激減する。 ②天気予報からの発電予測が不要となるため不安定さが激減する。 これにより、火力発電の下げ代をさらに下げることができる。 (図3.8)では火力発電の出力は1,200万kWであったが、(図3.9)で は最低出力を600万kWまでさげた。 下げることにより需要超過の可能性が激減する。 ☆何故、HBBSを使用していない風力まで抑制が激減するのか? ①太陽光が発電する時間帯で風力の抑制が激減する理由 前の(図3.8)はHBBSを使用していない場合であるが、その太陽光 の上に被さっている(緑)が風力の発電量である。太陽光が24時間 放電することで、太陽光の高さは4分の一近い高さになる。太陽光の 上に被さっていた風力もそれにつれて低くなる。その姿が(図3.9) てある。その図では風力はまだ需要曲線より高くなっているが、その 超過は火力発電の下げ代をさらに下げられるのと揚水発電でカバーで 需要超過にはならない。 ②太陽光が発電しない時間帯でも抑制が減少する理由。 HBBSを使用すると毎日夕方に各HBBSからセンターに自分の発電実 績を知らせる。受け取ったセンターはその発電実績から翌日の稼働計 画を作成する。従って、天気予報からの翌日分の発電予測は不要とな る。予測を使用しないことから予測と実績の誤差は存在しなくなる。 誤差が存在しなくなると火力発電の調整能力に頼ることは極めて少な くなる。そのため、火力発電の下限値を思い切って下げることが可能 となり、夜間の風力発電による需要超過も対応がしやすくなる。 (図3.9) 最後までご精読ありがとうございます。ご質問、ご感想、反論等 ozaki@smart-center.jpまで直接お送りください。 | (注)太陽光発電にHBBS適応できない場合があるのでご注意ください ①適応できないものがあるが、シミュレーションの都合上全太陽光発電装置にHBBSを適応した。 ②HBBSを使用できない太陽光発電もある。 使用できないもの ●自己消費のあるもの 例)・家庭用 ・FIT期間終了で自己消費 している産業用発電 ●既にHBBSなしで稼働してい る産業用太陽光発電 ●今後導入予定で2MW以下の もの スケールメリット効果や 接続変電所変更効果が全 く見込まれないもの |