太陽光発電が80パーセントを占める日本では、
太陽光は南中時の発電量が最大になるため需要超過になりやすい。だから、
需要超過分を出力抑制と称して、超過分を『切り捨てる方式』を採用している。
この方式を採用している間は、再エネ化率30パーセント以上は実現できない。

1.需要超過対処の方法 太陽光発電の発電量は太陽が真南に来る南中時が最大の発電量となる。 太陽光発電の導入量が増えると、増えた分だけ南中時の発電量が増える。 決して横には広がらない。ただひたすら上に伸びるだけだ。増え続けると、需要と言う 天井を突き抜けてしまう。(以下、タケノコシンドローム現象) 1日分の電力需要を太陽光発電だけで供給するためには、南中時の需要の3倍以上の発電 が必要となる。(3倍特性) 需要超過には、超過分切り捨て方式採用のため、再エネ化率30パーセント 以上にはなり得ない。 出力抑制量の決め方 (図1)でステップ2の曲線で囲まれた(青地と白地)発電量と、1日24時間の需要 曲線(赤破線)で囲まれた需要量が同じとすると、需要を超えない白地の部分は1日 の需要の30~40パーセントとなる。この時、再エネ化率は30~40パーセントである。 太陽光の発電量が増えてステップ3の発電になっても、需要量が変わらなければ 発電が許されるのはステップ1の白地の量のままである。その時の再エネ化率も 30~40パーセントと変わらない。捨てられる量は60~70パーセントとなる。 出力抑制として発電を禁止する件数は、出力抑制の対象となる発電所件数がm件と すると、ⅿ × {1-(X ÷ h)}件が発電禁止となる。(ステップ2の場合) 2.原発再稼働後 原発が再稼働するとベース電源となるので太陽光は底上げされて、発電できる量が少なく なる。(図2)では濃紺の部分となり、(図1)と比べると少なくなっている。 原発が再稼働すると、再エネ化率は30パーセント以下となる。 九州電力の例では25パーセント強となっていた。 (図2) 3.抑制量を少なくする方法 出力抑制を出来るだけ少なくして、有効発電量を増やす技術として、わが国では次の3種類 がとられている。 方法①長周期変動対応用蓄電池を使用 需要超過分を一時蓄電池に避難し、日没後の夜間に消費する。 膨大な容量が必要なことと、膨大すぎると夜間に消費しきれないことと、 蓄電放電ロスが大きいことでほとんど役立っていない。 九州電力の2019年4月22日に太陽光の超過分が1,347万kWhあったが、 豊前変電所には30万kWhしか保存できなかった。スズメの涙以下だった。 九州電力の出力抑制報告書を詳しく分析すると、抑制解消には全く役立って いないことが読み取れる。 東北電力 南相馬変電所 九州電力 豊前変電所 (2016/2/26運用開始) 8,500㎡ (2016/3/3運用開始) 14,000㎡ 出力 4万kW 容量 4万kWh 出力 5万kW 容量 30万kWh NAS リチウムイオン電池 NAS(ナトリウム硫黄)電池 (図3) 方法②揚水式発電の利用 超過分を消費するために下の池から上の池に水をくみ上げる。 電力会社ごとに数か所の発電所を持っている。 九州4か所で230万kW、東京9か所で800万kW、東北3か所で50万kW、 四国4か所で70万kW、関西5か所で90万kWなど。 九州電力の2019年4月に太陽光が700万kW発電したとき、揚水発電を 200万kW働かせたが、全超過分の消化には至らず220万kWの抑制に なった実績もある。 (図4) 方法③他電力への処理を依頼するための連携線の利用 引き受けてくれるところがあったときは有効、現在、九州電力の超過分の一部を 中国電力が引き受け、関西電力は北陸と四国の分を引き受け、東京電力は東北を 引き受けている。 しかし、認定受付で導入中が稼働し始める3年後は、受け取り側の太陽光の増加 分と原発の再稼働で、関西も、東京も引き受ける余裕はなくなる。 その時、連携線は「無用の長物」になる。 3.30パーセント以上にする方法 太陽光発電が80パーセントを占める日本では、再エネ化率が30パーセント以上になら ない。その原因は、タケノコシンドローム現象にある。 それには、『発電した電気は総てを生かす』技術で対応するしかない。 その技術とは、『発電した電気はいったんすべてを蓄電池に保存し、終了後、 24時間 かけて毎時均等量で放電する』である。 その技術を『ハイブリッド・バッテリー・システム(HBBS)』と呼んでいる。 この技術を使用すると、南中時の最大発電量が3分の一~4分の一程度に縮小する。 電力会社の系統制御システムに太陽光発電保障システム(PVSS)を組み込み、HBBS せて利用すると、出力抑制は完全に解消し、再エネ化率100パーセント以上も達成出来 る。電力会社にとっては毎日の発電予測や出力抑制予測などの煩わしい仕事から解放 される。 (図5) HBBSのシステム構成は(図6)のとおりである。 HBBSでは24時間放電を行うので、放電と蓄電が同時に行える機能が必須である。 パネルと蓄電池が持っている同じ機能は1個にできるので、パワーコンディショナー が不要となりコストを大幅に下げることができる。また、最大電圧が3分の一~ 4分の一になるので、系統接続変電所が低圧変電所になるため、系統接続工事負担金 が大幅に下がる。 また、出力抑制にならないので売電収入が大きく減額することがない。 (図6) 4.再エネ化率を30パーセント以上にするもう一つの方法 最近(2019年度)、洋上風力のコストが下がったとかで、急に風力の接続申し込みが増え ている。これまで風力の導入が少なかった東京電力にも、現導入済みの75倍の申し込みが あり、全て導入すると年間発電量は太陽光より風力のほうが多くなる。 風力には太陽光のようなタケノコシンドロームは発生しないので、再エネ化率は高まる。 しかし、風力は電力需要の少ない夜間に発電量が多くなることが多い。したがって夜間に 供給過剰になる確率が高い。 ということで、風力が増えた後の再エネ化率は40~50パーセントが最大となる。 最後までご精読ありがとうございます。ご質問、ご感想、反論等 ozaki@smart-center.jpまで直接お送りください。 |