何故、タケヤリ程度のシロモノか? 例えば、東北電力で出力抑制完全解消には126GWhの蓄電池が必要であるが、・・・・。 理由を説明する前に実証事業の詳細の説明から始める。 1.「大容量蓄電システム需給バランス改善実証事業」の概要 (1) 実証事業の目的 本事業では、一般電気事業者の送変電設備に接続する形で大型蓄電池を設置し、需給バラ ンスを改善することで再生可能エネルギーの受入可能量を拡大するとともに、蓄電池の大 容量性を活かした系統制御への適用の可能性等について実証を行う。 当システムを「長周期対応システム」と呼ぶことにする。 (2)導入システムの概要 南中時の需要超過分を系統上に設置された蓄電池システムに保存し、夜間の需要に利用 し、翌日の発電開始時刻までには空にしておく。(図2.6) 秒単位での応答特性を持つ蓄電池であること、また適正稼働率におけるシステム効率が 70%程度以上であること。 ![]() (3)導入した蓄電池システムの規模 東北電力 南相馬変電所 九州電力 豊前変電所 (2016/2/26運用開始) 8,500㎡ (2016/3/3運用開始) 14,000㎡ 出力 4万kW 容量 4万kWh 出力 5万kW 容量 30万kWh NAS リチウムイオン電池 NAS(ナトリウム硫黄)電池 (図2) (出典;東北電力、九州電力)(図面をクリックすると拡大します) (1)2020年代における東北電力の再エネ稼働を想定する 2020年~30年までの電力需要が最も少なく、出力抑制が最も発生しやすい5月の連休期 間における晴天日の発電量を下記の条件で予測する。想定結果は図3になる。 需要超過分は126GWhになる。 ・現在認定受付分の2倍が稼働とする(太陽光26.7GW) ・原子力発電が稼働している(女川原発の2,3号機、1,600MW) ・省エネが進み、35%削減が実現している 2020年代の稼働予測結果図 (図3) (図面をクリックすると拡大します) (2)想定結果からの必要な蓄電池システム 南相馬変電所(4万kWh)の3,160倍の容量が必要、その敷地面積は26.9平方km その面積は山手線内側面積(63平方km)の約4割に相当する。 将来、蓄電池価格は現在の半額になったとして10万円/kWhとすると12.6兆円となる。 (3)日本全国の電力会社 東北電力の発電量は日本全体の10パーセントを占めていることから、日本全体の量を 推測するときは東北の10倍と推定すると簡単にできる。 日本全体の蓄電池容量 ; 1,260GWh 蓄電池用敷地面積 ;269平方km(山手線内側の4個分) 蓄電池コスト;126兆円(電力10社の7年分の売上高) この膨大な蓄電池コストと膨大な蓄電池用敷地を巨大なミサイルとすると、当実証事業で東北と九州に導入したシステムは、「タケヤリ」にしか過ぎない。 「タケヤリ」でミサイルは打ち落とせないことを、シッカリと説明する。 (理由1)12.6兆円の蓄電池コストはだれが負担するのか? 震災以降赤字続きであった東北電力もここ数年は黒字となり、累積赤字もやっと解消し、 最近は年1,000億円に満たない利益しか出せていない東北電力が蓄電池のために12.6兆円 もの投資が出来るとは思えない。 電力会社が投資できなければ、国の税金に頼るしかない。国全体にすると、126兆円とな る。絶対に不可能である。 投資できなければ、当システムは全く役立たずのシステムになる。 HBBS/PVSSの解決策 弊社が提案しているHBBS/PVSSでは、ソーラーパネルと蓄電池を一対にして導入する。 蓄電池の費用は当然、発電業者が持つことになる。電力会社も国も蓄電池コストに関して 一切無関係となる。発電業者に、蓄電池コストの負担がのしかかってくるが、 ①パネルと蓄電池をセットにした格安の製品が購入できる。 ②系統接続電圧が4分の一になる事から、電力系統接続負担金が激減する。 ③出力抑制完全解消により計画通りの収入が得られる。 などで、コストは耐えられる。 パネルと蓄電池を一対にして導入することで、南中時に供給が需要を越すこともなくな る。何故なら、パネルと蓄電池を一体化することで、パネルで発電した電気は全て蓄電 池に保存されるからである。 保存した電気は、翌日の午前ゼロ時から一斉に24時間かけて均等に放電される。これに より、南中時のピークの山は完全になくなる。しかし、均等放電で南中時の高さは4分 の一になるが、放電量自体が需要を超過することは有り得る。その場合、安定給電機能 が働いて、超過分は外部のグリッド・ストレージに避難できる。出力抑制は完全解消と なる。 (理由2)土地は確保できるのか?土地代はだれが払うのか? 山手線内側面積(63平方km)の約4割の土地を探す(分割可能)だけでも至難の業、見 つかったとしてもその土地の購入またはレンタルにしても相当な高額になる。電力会社 は、現在の財務状況ではいづれの方法でも支払い不能であろう。 土地がなく、あっても土地代が払えなければ全くの絵空事にしか過ぎない。 HBBS/PVSSの解決策 弊社が提案している蓄電池は個々のパネル毎に、その下に設置する。蓄電池専用の土地は 必要としない。パネル設置敷地の有効利用である。 従って、蓄電池専用の土地コストは発生しない。 土地コスト以上のメリットは、パネルと蓄電池の一体化で、パネルから直流のままで蓄電 出来るので、コンバーターが不要等でパネルと蓄電池のコストを大幅に削減できる。 (理由3)夜中に放電しきれない 需要超過分を太陽光発電がお休みの夜間と早朝に消化するという前提であるが、図3を 見ると超過分に見合う夜間の需要がない。太陽光が終了する時刻から翌日の太陽が出始 める時刻までの需要の合計値は50GWhであるので、たとえ原発を含む全発電を停止した としても需要超過分の126GWhは消費できない。 夜間中に消化しきれずに翌日に持ち越すと、翌日の太陽光の発電を止めざるを得ない。 全くの役立たずである。 HBBS/PVSSの解決策 弊社が提案しているHBBS/PVSSでは、南中時に発電が集中して系統に負担をかけるという 現象は発生しない。従って、夜中に超過分を放電しなければならない事象は発生しない。 また、弊社は、時間当たり放電量を最小にすることを狙って、最初から24時間均等放電 を選んだ。24時間放電を選ぶと当然翌日の発電とぶつかるので、蓄電と放電が同時に並 行処理でき、且つ蓄電容量が最小になる仕組みを開発した。 均等放電で、放電量自体が需要を超過することは有り得る。その場合、安定給電機能が働 いて、超過分は外部のグリッド・ストレージに避難できるので、何ら問題は発生しない。 (理由4)蓄電ロス、放電ロスが多すぎる 当「長周期対応システム」で太陽光発電から、最終の需要家までに届く間の電気の損失を 図に書くと図5のようになる。 また実証事業の検証テーマの中に、「システム効率70%以上」が得られることを検証せよ となっている。裏を返すと、70%以下になる危険性もあることを示唆しているのである。 システム効率が70%以下になるという事は、太陽光発電が100kWhを発電したのに、最終 需要家には70kWh以下しか届かないという事である。発電業者には100万円払ったのに、 需要家からは70万円以下の収入しか得られないという事になる。 ここで、各種損失率について代表的なものを参考として上げておく。 ★直流から交流への変換ロス10~20%程度 ★送配電ロス 4~5%程度(送電距離や電圧に依存する) ★交流から直流への変換ロス 10~20%程度 ★蓄電、放電ロス(リチュウムイオン電池の場合) 1~5%程度 ★蓄電、放電ロス(ナトリウム硫黄電池の場合) 10%程度 (図5) (図面をクリックすると拡大します) HBBS/PVSSの解決策 弊社が提案しているHBBS/PVSSでは、太陽光で発電した電気を直流のまま蓄電するので 直流から交流への返還ロスは無くなる。蓄電池から系統へ乗せるとき直流から交流へ変換 するだけである。 「長周期対応システム」でロスが30%あるとすれば、弊社のHBBS/PVSS方式では10%程度 と推定している。ロス率20%の差を金額に換算すると、年間にすると1兆円となる。 (電力事業は年間20兆円近かった。再エネ化率が30%になったとすると、20兆円の内、6 兆円は再エネがもたらしたものになる。再エネの内80%が太陽光とすると、4.8兆円分の電 気が「長周期対応システム」を使用していることになる。ロス率20%の差を金額に換算す ると約1兆円がロスすることになる。20年にすると20兆円のロスである) (図6) (図面をクリックすると拡大します) (理由5)系統制御がさらに複雑となる 再エネを導入する前の電力会社の系統制御に関連する作業は、翌日の気温などから翌日の 需要予測を行いそれに対応させるための発電所の稼働計画を作成していた。再エネ導入後 は、天気予報から翌日の再エネの発電量を予測し、需要予測値との差分を求めて翌日の稼 働計画を作成していた。出力抑制が発生するようになってからは前日の内に出力抑制を予 測し、抑制が必要であれば対象発電所に連絡を入れている。 更に、「長周期対応システム」が加わるとそれに対する対応を組み込まなければならな い。系統制御の作業はますます複雑になっていく。 天気に左右される再エネの導入が増えると、その複雑さに加えて、予測誤差の危険性も増 えていく。同じ誤差率でもベースが増えると誤差率から生じる危険度が増えていく。将来 は、予測誤差から大事故が発生する危険性は大きくなる。 HBBS/PVSSの解決策 弊社が提案しているHBBS/PVSSでは、発電終了時刻にその日発電した発電量を中央システ ムに連絡し、中央側はその実績値を使用して翌日の稼働計画を作成するので、発電予測は 不要となる。また、実績から計画しているので、予測と実績の誤差も発生しない。その対 応も必要としない。また出力抑制も発生しないので、それに関連する一切の対応も不要で ある。また、PVSSの安定給電機能を使用すると、天気に左右されない量を事前に約束した とおりに供給するので、翌日のみならず長中期の予測も不要である。 HBBS/PVSSを使用すると、系統制御に関連するすべての作業が簡素化される。 そのメリットは金額では表現できないほどの大きさである。 (理由6)パネルと蓄電池を組み合わせた新製品を創出できる。 当実証事業が目指す「長周期対応システム」が完成したとしても、出力抑制が解消できる こと以外、副産物的新商品や、新サービス・ビジネスは期待できない。 HBBS/PVSSが生み出す新商品や新事業 弊社が提案しているHBBS/PVSSでは、出力抑制が完全に解消できるのは当然であるが、 その実現を通して新しい製品や新しいサービス、エネルギー業界のダウンサイジングで あったり、エネルギー業界の新産業革命を引き起こす不思議な夢を持っている。 新製品の出現 ☆パネルと蓄電池を一体化した新製品 ☆グリッド・ストレージ実現の新製品群 新サービスの実現 ☆グリッド・ストレージを利用した新サービス 詳細 ⇒⇒ 電力関連の新しいサービス・ビジネスの出現 ☆地産都消の新サービス 詳細 ⇒⇒ 地産都消 ☆電力自由化推進のための新サービス エネルギー業界のダウンサイジング ☆発電コスト最低の太陽光の導入拡大と電力自由化の推進 ☆大規模発電所から小規模発電所へ(脱原発の実現) エネルギー業界に対する新産業革命 ☆太陽光からできた液体水素の海外輸出 ☆地産都消実現がもたらす地方創世の拡大 ☆EV関連の新サービス事業 当実証事業に、蓄電池だけでも東北と九州合わせて700億円近い税金が投入されている。 果たして実証後、当システムは本格的に運用されるのであろうか? 弊社は「本格的使用は有り得ない」と予測している。 その理由はすでに記述したとおりであるが、実は、電力社員も経産省担当者も「使い物になら ない」と判断している向きがあるからである。 何故、そう判断したか? それは、実証事業が本格運用を開始し始めた後の2017年10月に、資源エネ庁の第12回系統 ワーキンググループが、電力会社別に出力抑制時間を計算し、発表した。(図6) 詳細 ⇒⇒ 出力抑制の見通しを資源エネ庁が発表 その計算結果を見ると年間の出力抑制時間を東北は1,559 時間、九州電力は1,513 時間として いる。本システムは出力抑制を解消するはずだったのに全く効果がないと証明している。 700億円近い税金を使いながら、この「ていたらく」である。 出力抑制完全解消技術は、弊社のPVSS/HBBSしかないと、シッカリと証明できた。 最後までご精読ありがとうございます。ご質問、ご感想、反論等 ozaki@smart-center.jpまで直接お送りください。 |
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