出力抑制激増、再エネ大崩壊(概要編)
前編、中編、後編合わせて100頁を12頁に集約
Ⅰ.2023年1年間に発生した抑制実績
実績①;最多は九州の136回、前年の1.7倍の回数。東京以外の9電力で発生。全国合計発生回数312回は前年の2.5倍。年々発生回数が増えつつ有る。
実績②;再エネ化率は22.7%、前年と比べ1%しか向上してない。
この分だと、30年目標の36~38パーセント達成は無理である。
主力電源化も脱炭素も、論理的に不可能である。
実績③;最多発生九州の年間抑制率は太陽光で8.6%、風力で3.3%。
月別で見ると最多の月は4、5月で、抑制率26.2%、23.7%。10%以上が10、3月。パネルローン払った後利益を出すためには10%以上必要と言われている。再エネ化率ではG7中最下位。G7以外でも韓国と最下位。
実績④;連携線の容量を増やせば、抑制は解消出来ると煽られて各地の連携線容量を増やしたが、抑制激増となった。
連携線と言え、同時同量が成立していることを忘れてはならない。送り側と受け側が必要で、受け側は中央3社、特に東京が受け手の6割を担っていた。
しかし、東京も、近年中に、原発再稼働などで供給過剰になり、受取れなくなる。
上の表を連携線表記すると、下図のようになる。下図は2023年の1年間に9電力の連携線を流れた電力量を表示したものである。
図中では電力会社毎に箱で表示し、電力会社名の真下にある数字が電力各社の電力需給実績表に掲載されていた同時刻の連携線欄の数値である。数値が黒字であれば、不足していたため外部から取り込んだことを意味し、赤字であれば供給過剰のため外に放出したことを意味する。 例えば関西電力は6,859GWh不足であったので、外部から取込んだ。取込先は中国から22,980(以下 単位は省略)、北陸から102取り込んで不足分を補充したので、余った16,223は中部へ送った。中部では 中部の不足分14,837を関西からの16,223で補充した後の残り1,386を東京へ、東京の不足分38,470は東北と中部 からの合わせた36,318で補った。ここで2,152だけ多いがこれは送電ロス、周波数変換ロス、直行変換ロス等と考えられる。電力9社間で同時同量が成立していることが証明された。
1年通しても同時同量が成り立っている。
Ⅱ.2030年までに、再エネに関連する予想
予想①; 受付中再エネの稼働開始
現在121GW稼働、うち太陽光が74GWで、6割を占めているが、各電力会社が受付ている未稼働の再エネが185GWもある。これらが全て稼働すると現在稼働中の2.5倍の容量になる。
特性 Ⅰ;上へ上へと伸びる「タケノコシンドローム現象」
太陽光発電の導入容量が増えると、発電量は南中時を目指して、上へ上へと伸びて行く。決して横には広がらない。タケノコは一日に30センチ伸びる。猛烈な勢いだ。伸びきった「タケノコ」は、「天井」(平均日需要)を突き抜け、更に伸びると、屋根(ピーク日需要) も突き抜ける。 突き抜けた「タケノコ」は切らざるを得ない。出力抑制の原因の全てが、このタケノコシンドロームにある。抑制解消は、このタケノコ狩りが必須。
予想②; GX(グリーントランスフォーメーション)
グリーントランスフォーメーション(GX)とは、気候変動の主な要因となっている温室効果ガスの排出量の削減と経済成長の両立を実現するため、経済社会システムの変革を目指す取り組み。GX推進で予想以上に再エネ導入が進むと予想される。
予想③; 原発再稼働
★既に稼働中10基(996.8万kW)に加えて、新たに7基(561.6万kW)稼働予定
24年の夏以降に再稼働する方針
予想④; 供給過剰量を、「需要の何倍か」で表す(計算結果)
★★★ 第1フェーズ (30年頃) 太陽光が主力 ★★★
30年頃の夏ピーク日は東京と中部と関西で不足しているが、日本全体では過剰となっている。
★★★ 第2フェーズ (35年頃) 洋上風力が主力 ★★★
35年頃の東北と北海道は、雨の日も風の日も、夜も昼も抑制だらけで、発電業者の夜逃げ頻発。中國や九州もほぼ同じ。東京も年300回近い抑制。あちこちで暴動発生。
★★★ 倍率の意味する天気の内容 ★★★
倍率は電力会社の供給域が全域快晴の場合を想定して計算しているので、供給域の一部が曇りや雨であると、再エネ発電の供給量は少なくなる。少くなったとしても、高倍率であると供給過剰になる。
その倍率と供給過剰の状態を倍率で表示した。倍率が2.0倍以上になると全域が悪天気でも、供給過剰になる事を意味している。太陽光は雨の時は出力が少ないが、風力はお構いなく供給過剰になることも有るので要注意である。
予想⑤; 中央3社も供給過剰になる(連携線の受け取り手が無くなる)
供給過剰分を連携線経由で受取っていた中央3社が、南中時に供給過剰になるので。他所の過剰分を受取る事は出来なくなる。特に供給過剰分の60パーセントを受取っていた東京が受け取れなくなるのは影響が強い。関西に多少の余裕はあるが、受取の10パーセント程度あるので、ほぼ無視できる。
特性 Ⅱ; 日本列島は、北海道から九州までが、同時刻に、太陽光で最大発電になる
日本列島は東経130度から145度(除く沖縄)に位置しているため、太陽が北海道の東の端の根室の上空に来てから1時間後に、西の端の九州平戸の上空に来る。つまり、日本列島は太陽光軌道の1時間の範囲にある。実際に、下図右は2020年5月3日の電力各社の電力需給実績から作成したグラフである。このグラフを見ると、沖縄以外はほぼ同時刻に最大発電量になっている。(東京と四国は単位が万kWであるが他は全てMWである)
欧米の東端と西端は、時差が3~4時間あるので、全国一斉に最大発電になる事は無い。
Ⅲ.2030年頃の電力各社別月別出力抑制回数
結果(1) 2030年頃の地域別、月別抑制回数
電力10社中6社が、昨年の九州の136回より多い200回以上の抑制回数となった。 最多は東北と九州で、359回と335回。最少は、沖縄を除いて関西、83回である。
結果(2) 30年度目標36~38パーセントは達成できず!!
太陽光の容量は70GWから131GWへ1.8倍に、風力は5GWから44GWへ8.4倍に増強されたのに、国全体の再エネ化率は22.7パーセントから31.6パーセントと、8.9パーセントしか伸びていない。国の30年達成目標の36~38パーセントは達成できず、儚く討死である。しかし、伸びたのは出力抑制で、太陽光が31.06パーセント、風力が37.28パーセントと激増している。
抑制率も膨大で、東北の太陽光で77.8%、風力が74.6%と、事業継承は不可能な値である。ローン支払い後、10%の利益確保は困難な中で、沖縄以外は赤字となる。
結果(3) 出力抑制解消せず、導入続けた場合の問題
①これ以上太陽光を増やしても、抑制に回されるだけ
昨年(23年)1年間の九州の出力抑制回数は136回もあったが、再エネの導入済容量増加に合わせて、毎年導入拡大続けた結果、30年頃には、需要の多い夏や冬のピーク日でも供給過剰になる。30年過ぎて35年までは洋上風力中心に増加続ける。35年頃に、最大倍率の東北では4.5~11.2倍になり、手の施しようもない悲惨な結果になる。最大需要の東京ですら年間通して供給過剰になり、出力抑制が頻発する。その結果連携線は機能しなくなる。
②中央3社(東京、関西、中部)に出力抑制発生後は、 連携線機能せず、過剰分は抑制されるだけ
中央3社の、連携線経由で地方電力の供給過剰分受取量が23年の1年間で63,324GWhあったが、 その内、東京が61%の38,470GWh、中部が23%の14,837GWh、関西が11%の6,859GWhであった。3社の合計値63,324GWhは今後新たに稼働する原発で帳消しになる。しかし、30年頃に3社も供給過剰になり、他所の地域の供給過剰分の受け取りが出来なくなる。3社も供給過剰で出力抑制を実施することになる。特に東京は年間228回と3社中一番多い回数になる。
③洋上風力が大量に稼働しても、殆どが抑制に回されるだけ
現在日本全体の風力は578万kWしかない。全再エネの5%にも満たない。しかし、受付中が12,500万kWも有り、全てが稼働しても、殆ど出力抑制の対象となる。やるだけ無駄な導入となる。
Ⅳ. 出力抑制解消、再エネ化率UP
(1) 特性 Ⅲ;24時間放電時の時間当たり放電量は、南中時最大発電の3分の1~4分の1の出力になる
太陽光発電が晴天日に発電した一日分を一旦蓄電し、発電終了後に24時間かけて均等放電すると、1時間当たりの放電量は、南中時の最大発電量の3分の1~4分の1になるという、特性がある。日照時間が多い夏至の頃は3部の1で、冬至の頃は4分の1になる。例えば下図Step1曲線(白線)は最大値が2400万kWで24時間放電では847万kW、Step2(赤線)では最大が7,922万kWで、24時間放電では2,683万kWとなっている。Step3の発電量を24時間かけて放電すると、1時間当たりの放電量は4,294万kWとなる。
この放電量では、南中時の需要を超えることは無い。 ただし、早朝の低需要時間帯には、需要を超えることがあるので対策が必要となる。昨年(23年)4月に、20回の出力抑制を実施した九州の全太陽光に24時間放電を採用していれば、抑制は全く発生してなかった。
(2)蓄電と放電の同時処理が可能な蓄電池
★蓄電と放電を同時処理可能な複数個の ★1日分の発電量の蓄電池を2組持ち
蓄電池を組み合わせる 日替で蓄電用と放電用と交互に使用
★パネルで発電した電気を直流のまゝ蓄電 ★自己消費できなかった電気を蓄電する
(3) 太陽光、風力、火力が得られる直接効果の金額換算
蓄電池使用で増加または減少した発電量を、IT買取単価もまたは公表されている火力の単価で計算とした結果、なんと火力が最大効果を生み出している。東京電力では太陽光の効果が、風力より少ない最低の額であった。
20年間の額は東京も東北も、系統下の全蓄電池のコストより大きな額である。
蓄電池コストを太陽光発電業者だけに負担させることは、極めて大きな不公平を生み出すことになる。
(4) HBBS採用は、電力トップの決断次第
東京電力は自社の系統に接続された全太陽光の蓄電池のコスト6兆3866億円を負担すると、火力発電の燃料費が20年間で13兆1397億円節約できる。 東北電力は20年間で3兆3398億円の投資で5兆4638億円の燃料費の節約となる。
太陽光だけに蓄電池を適応したにも拘らず、風力と火力発電にも効果が出ている。 しかも、最大効果は火力発電で、太陽光は最小の効果でしかない。
(5) HBBS導入で再エネ導入ファースト・フェーズは完成
38.7 % ⇒ 76.9%+ 7.1 %
♦ ♦ ♦ ♦ ①東北の事例 ♦ ♦ ♦ ♦
年間抑制回数が359回の東北の全ての太陽光にHBBSを導入すると、太陽光に対する抑制は完全解消し、再エネ化率が一気に76.9パ―セントに達する。原発が7.1パーセントあるので、再エネ+原発で84パーセントになり、ほぼ限界に達したと判断できる。HBBSを使用しない風力までも、お零れ効果で74.6パーセントの抑制が、44.4パーセントまで減少出来た。
Ⅴ. HBBS導入後、洋上風力も崩壊
(1)大量洋上風力稼働後の姿
30年過ぎに洋上風力が、圧倒的大量に、稼働開始する。現在受け付けている風力の容量は、稼働中風力の数十倍の容量である。一番多いのは東北の36倍で7,484万kW、中国が34倍、九州が14倍。東京11倍である。風力は夜も昼も発電するし、強い風が数日間続くことも有るので、出力抑制対策は、太陽光の対策とは全く異次元の、風力専用の新たな対策が必須となる。
30年頃は1年の内殆ど毎日昼間は太陽光で供給過剰になっている。そんな環境で洋上風力が発電しても、昼間は全日抑制される。夜間は原発と火力の最低出力で洋上が入りこむ余裕はない。HBBSが導入されていても、原発とHBBSで80%程になっているので、洋上が入り込む余裕はない。
下図は過去の陸上風力発電実績に対して30年過ぎの新風力の倍率を乗じて作成したものである。
35年頃東北の再エネ容量と稼働想定図
(2)洋上風力発電即 ⇒ 液化水素
発電した電気は連携線に乗せずに現場で液体水素に変換
①洋上風力発電グループ
洋上風力は数十基単位で海上に設置される。
②グループ毎に最寄り地上基地に接続
③地上基地で即液化水素製造
④船またはトラックで 目的地へ輸送
トータルエネルギーシステムとして世界へ拡大
パネルや風車の安い単価だけに頼ったグローバル展開ではなく、HBBSや、液化水素展開、グリッドストレージ構想、マイクログリッド技術、脱炭素化後の新電力系統制御技術のトータルエネルギー・システム技術の総合技術、それを現地に適応させるためのコンサル技術、等
しかし、経産省も電力会社も、秘かに再エネ崩壊を仕組んでいる。再エネ崩壊すれば、原発しか無いよねと言って、原発再稼働を楽に推進出来る。しかし、再エネが成功すると原発は消えざるを得ない。そうなると困るのだ。
HBBSは電力にとってコスト的に得すると分かっていても、経産省が何かと難癖付けて反対してくる。それとどう戦うか、最後の難関が待ち構えて居る。
全てを含んだトータル技術で世界に貢献する。
それが技術大国日本が目指す道である。