何故、ドイツやフランスでは

タケノコシンドローム(出力抑制)

が問題になっていないのか?

再エネ先進国のドイツやフランスの再エネ環境を理解しておこう

ドイツは風力が最適、日本は太陽光が最適である理由が分かる


   (1)ドイツの場合


ドイツとフランスの発電実績から

        ドイツ全体の1年間の需要と太陽光の発電実績を図式化したものが、図1.2である。

        図1.2を見る限りでは、再エネ先進国であるドイツでも、太陽光発電量(黄色)は需要(紫色)

        に比べると遥かに少ないので、需要を超過する状況にはない。

        この状況では、出力抑制の必要性はまったく存在しない。

        ドイツでは、電力系統制御は、ドイツ全体の需要に対して行われているため、タケノコシ

        ンドロームは当分の間発生しそうにない。(日本では小さく分割した地方単位に行われて

        いる)

    出典:http://www.agora-energiewende.de/en/topics/-agothem-/Produkt/produkt/76/Agorameter/

        上図から読み取れること

           ①電力需要は太陽光の10倍ほどあるので、太陽光が需要を超すことは全くあり得ない。

           ②需要のピークは冬で、夏は閑散期である。

           ③気候が穏やかなため、年末以外は電力需要の激変は少ない。週単位で同じパターンの

                需要量となっている。

           ④一日当りの太陽光発電量は夏至の頃が最大で、冬至の頃は夏至の頃の20分の一程度で

                ある。


(2)ドイツでは太陽光発電は「役立たず」        


        ドイツは冷房需要は皆無で、暖房需要中心である。ドイツ全体の電力消費を見ると最低月

        は8月で、ピーク月は12月である。しかし、太陽光発電の一日当たりの発電量を夏至の頃

        (図1.3と1.4)と、冬至の頃(図1.5と1.6)と比べると、20倍以上も夏至の頃の方が多い。つま

        り、本当に必要としているときに太陽光は役立っていないから、「役立たず」であり、そ

        んな太陽光への投資には躊躇(とまどい)が出る。

        (参考;日本では冬至と夏至の頃の一日当たりの発電量の差は2倍程度。夏至の頃は梅雨の

         時期になるため発電量は落ちる。梅雨のない北海道で2倍程度の差が出た実績がある)



  (3)何故、夏と冬の発電量に大きな差が出るのか?


    差が出る理由①夏は昼時間が17時間もあるが、

冬は7時間しかない。(表1.7)

                                  球体状の地球は、地軸の約23度26分の傾きから、緯度の高い地域は夏の

                          昼時間は長くなり、冬は短くなる。EUの主要都市の昼時間は次の通り。

 (参考)①夏至の頃は昼時間が長いにもかかわらず、北欧の地域は日照時間が南欧に比べると短い(図1.9) 昼時間とは、日の出から日没までの時間を言い、日照時間とは気象庁の定義では『直射日光が雲などに遮られずに0.12kw/m2 以上で地表を照射した時間。×.×時間とあらわす。』となっている。直射日光が射すことが重要である。

②各地の年間の昼時間の推移春分の日と秋分の日を境にして昼と夜の長さが逆転する

    差が出る理由②太陽光発電に一番大切な日照率、                                                   特に冬場の日照率が低い。

夏至の日にはベルリンは一日の昼時間が16時間50分で、リスボンより2時間ほど長く(表1.7)、この2時間は月換算で60時間に相当するが、7月の日照時間はリスボンより月間で130時間も少ない(図1.9)。これは何を意味するか?

鹿児島はどうであろうか?鹿児島は6月に日照時間が急落しているのは、6月の梅雨の時期で雨のためである。鹿児島は日本でも最も雨の多い地区である。5月から8月までは日照時間は南欧に比べると少ないが、それ以外の月は南欧にほぼ同じ日照時間である。

 差が出る理由③冬至の時の太陽光度が低い(日射強度弱)ため、一日の発電量がさらに少なくなる。

        主要都市の夏至の日(図1.11)と冬至の日(図1.10)の南中時の太陽光度を計算した。

        結果は上図の通りである。

        ベルリンの冬至の日の高度14.1度は、日本の東京で、冬至の日の午前8時30分時の高さで

        ある。

        この時間は東京では、まだまだ寒い時間帯である。

        高度が低いと光は斜めから入射されるので日射強度は弱くなり、発電量も少なくなる。


(4)ドイツでは風力発電を「再エネの本命」にしている理由


        理由1.風力発電に適した風の「偏西風」が豊富に得られる。

            偏西風とは北緯または南緯30度から60度付近にかけて中緯度上空にみられる定常的な

            西寄りの風で、熱帯地域の熱と極地域の冷却の間の層厚の違いにより発生する。偏西

            風は高度とともに強くなり対流圏界面付近で風速が最大となり特に、冬季には対流圏

            界面付近で毎秒100mに達し、ジェット気流とよばれる。また、天候を西から東に変え

            る原動力でもある。赤道と極の温度差が大きくなると偏西風は南北に蛇行するように

            なる。(図1.12)

        偏西風のおかげで北欧の風力発電の設備利用率は60パーセント程度を達成しており、日本

        の風力発電の設備利用率30パーセント程度を遥かに凌駕している。


        理由2.遮る山岳が無い・・・・どこでも風力発電最適地

            ヨーロッパの地形は山岳が少ない。特に西から東に吹く偏西風を遮ることになる西側

            の山岳は皆無である。中でも、ベルギー、オランダ、ドイツ、デンマーク、ポーラン

            ドにまたがる北ヨーロッパ平野には標高が海抜0mから200mで、何ら山岳など存在し

            ない。(図1.13)

            ドイツ首都ベルリン名称の由来は、スラブ語の「湿地帯」と言われていることを見て

            もよくわかる。

            ドイツの面積は日本とほぼ同程度であるが、山岳がほとんどないため全てが可住地と

            なる。日本の可住地面積は実際の面積の3分の一程度だから、可住地レベルで日本と

           ドイツを比較すると、日本はドイツの3分の一ということになる。だからドイツの風

            力発電最適地は日本の3倍になる。


(図1.12)


  理由3.ドイツでは台風は皆無、落雷も微小

台風に相当する暴風はヨーロッパには存在しない。

世界中を見ると、フィリッピンから台湾と日本を襲う台風があり、カリブ海とメキシコ湾から米国を襲うハリケーンがあり、インド洋からインドを襲うサイクロンがあるが、ヨーロッパにはそのような言葉すら存在しない。

 理由4.風力の発電量は冬が比較的多い

 図1.16を見て分かることは、フランスでも電力需要は冬が多く、夏は少ない。

従ってその需要を満たすのは、冬に多く発電する風力発電が最適である。風力発電の発電量は、風まかせでその日によって大きく異なってくる。図1.16はドイツに似たフランスの発電実績だが、風力発電はその日その日で大きく異なっていることが分かる。月別平均値で見ると冬が多く、夏は少ないことも分かる。逆に、太陽光発電は夏が多く、冬は少ないことも分かる。風力と太陽光はお互いを補う、絶妙な組み合わせとも見える。

         出典:http://clients.rte-france.com/lang/an/visiteurs/vie/prod/realisation_production.jsp

(フランスのグラフの横軸は、'日'だけで時間は含まない。

ドイツのグラフは'日・時間'で、時間を含んでいる)




(5)フランスのタケノコは?


        フランスではタケノコシンドローム現象が問題になっていないのか?

        (太陽光発電が需要を超過するようなことになっていないか?)

        図1.16を見ても分かることは、太陽光発電量は電力需要よりはるかに少ない。

        タケノコシンドロームは、全く問題となっていない。今後とも問題になることはしばらく

        の間はありそうにない。


  フランスの総需要と太陽光と風力の発電量にご注目ください。

        太陽光も風力も総需要に比べると圧倒的に少ない。

        だから、再エネの発電量が需要を超過する心配は今のところ全くない。

        再エネの導入量が爆発的に増えた時は、彼らも出力抑制で悩み始めるだろう。

        その時は、彼らは出力抑制先進国の日本に学びに来るだろう。

        その時までに日本は技術大国にふさわしい解決策を作っておきたいものである。



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