N-1電制適用の東北に出力抑制が加速し始める
送電線の運用変更( N-1電制適用)で、東北は出力抑制へまっしぐら。
N-1電線適用(系統容量増設)しても出力抑制の解消には全く貢献しない
逆に出力抑制を早めるだけである
1.東北地区の再エネ稼働状況
(1)電力需要の最も少ない本年5月の
ゴールデンウィークに、出力抑制は無かった
本年(18年)5月の出力抑制はなかったが、発電実績データーを東北電力はまだ公表していな いので、昨年(17年)の実績を使用して説明する。
図1は、昨年の出力抑制が最も発生しやすい5月1日から8日までの稼働図である。データは東北電力のサイト「過去の発電実績」からダウンロードして、弊社がグラフを作成した。
この図を見ると電力需要(赤破線)を超えた発電がおこなわれているが、この超過分は他電力(東京電力等) へ売電するためであるので出力抑制の対象にはならない。
天気通りに稼働 (図1)
稼働中の電源種別の内訳は、認定受付から作成した表に掲載した。(図2)
図2でわかることは、稼働中太陽光は3,123MWで風力は1,046MWであった。 審査待乃至導入中は太陽光が10,711MWで、風力は2,751MWとなっている。
(図2)
(2)未稼働分のすべてが稼働する
2020年頃の出力抑制頻度を予測する
現在、未稼働で審査待乃至導入中の全てが稼働した場合、出力抑制はどうなるか予測する。
予測に際しては、17年の天気と同じ天気で想定した。
想定結果は、図3に表示しているが、その想定では8日の内6日は抑制日となる。
判定理由は、増えた太陽光発電の対応として、火力発電と水力発電の発電を減らしているが、それでも対応できない分は揚水発電と他電力連携で対応する。(図3)
最終的な他電力連携で対応できない場合は、出力抑制となる。他電力連携は連携線の容量と他電力の受け入れ能力に依存する。ほとんどが、連携線容量で抑えられている。
図3を見ると他電力連携は下部赤実線で-2000kW以下は出力抑制となると解釈してかまわない。5月2日、3日、4日、5日、7日、8日が抑制対象日となる。
認定受付分が稼働した場合 (図3)
(註)現在(2019年6月)、東北電力は太陽光など再エネの発電が需要を超過しているが、超過分は東京電力と北海道電力に送って処理をして貰っているので、東北地区に出力抑制は発生していない。北海道も東京電力も、原発が再稼働していないので発電能力不足で困っていたところである。北海道と東電が原発再稼働したときは、要注意である。
どの発電所が抑制対象となるか?(発電所から見た抑制回数)
抑制対象発電所は需要超過量で決まる。超過量が多い時は、多くの発電所が対象になり、少ないときは、わずかな発電所だけが対象となる。
例えば、5月3日の時間当たりの最大需要超過量は約5,800MWであるが、その日の南中時最大発電量は11,700MWと予想しているので、超過分は最大発電量の約50パーセントに相当する。従って、需要超過を解消するためには、抑制対象となる10kW以上の発電所62,157件の内の50パーセント31,000ヶ所が抑制対象となる。
抑制対象の発電所31,000ヶ所は午前9時から16時まで発電中止となる。
同様に5月4日は最大発電量が10,148MW、超過量は4,379MWで43パーセントが対象となり、26,800ヶ所が午前9時から16時まで発電中止となる。
4日の対象箇所は、3日に対象とならなかった発電所から選ばれる。5日の対象箇所は3日と4日に対象とならなかった箇所が7パーセントあるので、その中から選択される。7パーセントでは足りないので、3日に対象となった個所から選択される。
抑制対象の選択に際しては、特定発電所が選ばれたり、選ばれないようにすることは「公平の原則」に乖離するので、電力会社は慎重に選択しなければならない。
一つの発電所から見た場合、8日間の内、抑制命令を受けた回数は2回から3回となる。
いつから抑制が始まるのか?
出力抑制開始時期は、認定受付された発電所は3年以内に稼働しなければならないので、おそらく来年(19年) の5月頃から始まるだろうと予想している。
(3)原発再稼働後の抑制頻度は?
東北電力には原発は2ヶ所がある。女川と東通である。いづれも現在は稼働していない。
発電能力は女川が1号機が52.4万kW、2号機が82.5万kW、3号機が82.5万kWで合計が217.4万kWである。東通は110万kWてある。
4基の原発の内230万kWが発電した場合の出力抑制を計算した。計算結果は図4の通りである。
原発が再稼働しても、5月のゴールデンウィーク期間の抑制回数は、図3と同じである。
抑制回数は同じだが、需要超過量が大きく増加する。増加すると対象発電所の数が増える。
例えば、5月3日は最大需要超過量は約8,100MWで超過分は最大発電量の約70パーセントとなり、対象発電所は43,000ヶ所となる。
同様に、5月4日は最大需要超過量は約6,600MWで超過分は最大発電量の約66パーセントとなり、対象発電所は40,900ヶ所となる。
一つの発電所から見た場合、8日間の内、抑制命令を受けた回数は4~5回へと増加する。
原発再稼働後 (図4)
(4)出力抑制は5月のゴールデンウィーク期間だけか?
出力抑制が、需要の少ないゴールでウィーク期間だけであれば、たいして問題にならない。
果たして、1年間のうちどの程度の頻度で出力抑制が、東北電力管内で発生するのか?
需要がピークとなる夏や冬でも出力抑制が発生するのか?
7月21日(金)の夏ピーク日(黒点線)と1月24日(水)の冬ピーク日(黒実線)の電力需要を発電量が超過している事を見れば(図5) 、夏も冬も出力抑制が発生することは容易に想像できる。
つまり、これだけ多くの太陽光発電があれば、1年を通して出力抑制が発生すると判断できる。年間の抑制時間の予測は資源エネ庁の第12回系統ワーキンググループの計算結果が公表
されている。 ⇒⇒ 出力抑制の見通しを資源エネ庁が発表
それを見ると、東北電力は接続可能量を552万kWとしているので、その量を450万kW超えると、つまり1,002万kW(10,020MW)を超えると1,501時間の抑制となるとしている。
また、太陽光の導入量が増えると、10kW以上の発電所のすべては、抑制時間が無制限に増える。抑制されて発電収入が減っても、それに対する保証は一切ない。(無制限無保証)
FIT認定制度の初期の段階で太陽光発電に参入した発電業者は、20年間買取を保障してくれるとすっかり安心感にどっぷりとつかっているが、ある日突然出力抑制の通知が来て、予定通りの収入が得られなくなる。収支計画も経営計画もガタガタに崩れ始めることは十分に予想できる。
ピーク需要も超過 (図5)
2.出力抑制解消方法
(1)出力抑制解消の具体的方法
出力抑制を完全に解消する方法は蓄電池(ハイブリッド・バッテリー・システム;HBBS )を使用する方法以外、世界のどこを探しても見当たらない。
それではHBBSを使用した場合の出力抑制がどの程度発生するかを検討する。
検討手順は次の通り。
★既に稼働している発電所は現状のまま蓄電池を使用せず直接系統に接続する
★新しく導入する太陽光発電所にHBBSを使用する。
★HBBS使用の場合は発電の翌日の午前ゼロ時から24時間かけて均等に放電する
太陽光発電が多かった日の翌日の放電量は多い、少なかったときは放電量も少ない。
★需給バランスの維持は火力発電と水力発電で調整し、調整しきれないものは揚水動力と他電力連携で調整する。
★最終調整結果の他電力連携量が2000kW前後であって、現在の連携量と同じ量であるため、HBBS使用している太陽光も使用していない太陽光も出力抑制にはならない。
★HBBSを使用していない太陽光発電は、将来、下記の原因で抑制対象となるので要注意。
・原発の発電量がさらに増加した場合
・HBBSを使用しない太陽光発電が増えた場合(共倒れ)
・HBBS使用の太陽光発電が増えた場合(HBBS使用の発電自体は抑制対 象にならない)
・電力需要が減少した場合(家庭や工場で自家消費の太陽光が増えた 等で減少)
HBBSの詳細 ⇒⇒ HBBS概要
蓄電池コスト問題 ⇒⇒ 出力抑制解消のための高額蓄電池コスト問題を
HBBS使用で出力抑制完全解消 (図6)
(2)太陽光を天気に左右されない
ベース電源として利用する
HBBSを導入すると24時間均等放電でかなり安定してくるが、晴天の場合と雨天の場合の放電量に差は依然として残っている。図6を見ると時間当たり放電量が5月2日と7日はかなり落ち込んでいる。系統制御ではこの落差への対応に苦慮することになる。
電力会社の系統制御システムに弊社のPVSS(太陽光発電保障システム)を導入し、安定給電保障機能を使用すると、落差が無くなり、太陽光発電を天気に左右されないベースロード電源として利用出来る。
導入メリットは電力会社にとって系統制御の簡素化とコスト削減が可能となり、出力抑制も更に減少する。
天気に左右される太陽光発電を、最も安定化したベースロード電源として利用する、世界の最先端を行く再エネ系統制御技術である。
安定給電保障 ⇒⇒ 給電保障
安定給電保障機能で太陽光をベース電源化 (図7)
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