「空き容量ゼロ」議論は幼稚で、
間違いだらけで、
バカバカしい!!
幼稚で、間違いだらけで、バカバカしい理由
1.系統への接続議論は「平均値」でなく「最大値」「最小値」で議論すべきだ
2.系統への接続ができた後の、「出力抑制対策」を合わせて議論すべきだ
3.系統容量増設の議論の前に、再エネの接続電圧を下げる議論を先にやるべきだ
4.空き容量不足は局所的問題であって全体の問題ではない
5.ドイツの系統接続方法を日本に適応するのは危険すぎる
1.「最大値」「最小値」が重要
最近は再エネ導入のための系統容量が足りないという議論を頻繁に目にし、耳にする。
このテーマは、FIT制度が開始した6年前にも系統容量が足りないと騒いでいたことがあったが、昨年(17年)後半から、また話題(議論)になり始めた。
某国立大学の御高名な先生の「空き容量ゼロ」に疑問を投げかけたことをきっかけに、NHKや多くのメディアでもこの問題は取り上げた。
この議論を通して正しい結論が出ることを期待したいが、残念ながらこれらの議論の中身を見ると、幼稚で、間違いだらけのため、正しい結果に導かれるとは期待できない。かえって混乱や不信感や発電業者の倒産が拡大する恐れがある。
その恐れを払拭するために、正しい議論をあえて提言する。
太陽光発電の年間の系統使用率は7パーセントと極めて低いが、発電の集中する南中時は平均使用率の10倍から20倍位まで急増する。
2.「出力抑制対策」を合わせて議論すべきだ
太陽光発電で系統容量不足と言っているのは、南中時の最大発電時が不足と言っているのであって、平均的に不足と言っているのではない。
(「空き容量ゼロ」に疑問を投げかけた某国立大学の御高名な先生の専門は風力発電で、太陽光を嫌っている発言が目立っていた。また、彼は大変なドイツかぶれで「ドイツのやっていることはすべて正しくて、日本のやっていることは間違い」的な発言も多かった。
風力発電には太陽光発電のような南中時に発電が集中することがない。また、風力は一日24時間発電するが、太陽光は昼間しか発電しない。風力は24時間のどの時間に発電するかがわからないので24時間を平均的に考えるしかないため平均使用率を重視する。太陽光は最大値を重視する。
公に自分の意見を述べるならもっと勉強してからにすべきだ。先生の論文で社会が混乱し、少なくとも迷惑を受けている人たちがいることを忘れるべきではない。少なくとも税金で飯を食っているならもっともっと勉強すべきだ)
系統への接続が出来た後の、「出力抑制対策」を合わせて議論すべきだ
空き容量問題が完全に解決して全希望者が接続可能になった後は、発電量が極端に増加して出力抑制が頻発することになる。その抑制量は資源エネ庁の第12回系統ワーキンググループが発表した見通しによると、年間1500時間以上、日数にすると年間250日以上、午前9時から16時までは発電禁止になる。こんなに抑制されたのでは投資の回収は不可能である。
抑制で悲劇が始まり発電業者の倒産が多発することになる。
「空き容量ゼロ」に疑問を投げかけた某国立大学の御高名な先生も、テレビ特別番組で放映したNHKも、「空きは有る」と主張はしているが、両者とも接続した後の「出力抑制」には触れていない。まるで人を不幸に陥れる「悪魔のささやき」である。
接続拒否と出力抑制の違いは、前者は発電事業の計画段階で発生するが、後者は導入後に発生する。計画段階ではまだお金が動いていないが、導入後はすでに借金も抱えたし、人も採 用している。悲劇になるのは後者であって前者は大きな悲劇にはならない。むしろ、事前に接続をお断りしてやるほうが親切と言えるのではないだろうか?
一般電気業者(電力会社) が「空き容量不足」と言うのは、導入後の出力抑制を考えて一般の方が理解し易い言葉「空き容量不足」と言っているのである。「出力抑制」は一般の方には非常に理解しがたい言葉である。
東北電力が全域で空き容量ゼロと言っているのは、出力抑制発生の危険性を未然に防ぐための方便であったと解釈している。「空き容量ゼロ」への対策を考える前に「出力抑制防止対策」を先に、又は、併せて考え、発表すべきであると、弊社は主張する。
残念ながら、日本はじめ世界中どこを見ても、弊社以外に「出力抑制」を本格的に研究し、 結果を出しているところはない。
3.再エネの接続電圧を下げることが先
系統容量増設の議論の前に、再エネの接続電圧を下げる議論を先にやるべきだ
系統容量増設の議論の前に 、もっと重要な議論をすべきである。
重要な議論として、再エネの接続電圧を下げることの議論である。接続電圧を下げれば系統の容量が増えたことと同じになる。コストをかけないで容量を増やしたことになる。残念なことに「空き容量」議論の中には、接続電圧を下げる提案は皆無である。既存の電圧の下に接続を議論しているだけである。世界に誇る技術大国である日本としては情けない。
太陽光発電の場合、太陽が真南に来た時(南中時)に最大発電となる。南中時の発電量の中で最大となるのは、夏至のころの晴天日における発電である。
(日本では、6月は梅雨の影響で発電量が少ないため、5月が最大になる地域が多い)
系統の必要容量は1年間の最大発電量で計算される。その最大発電量がる。
一つの系統に20MWと30MWと40MWの発電装置が接続されると、系統に必要な容量は
20MW+30MW+40MW=90MWとなる。
弊社のハイブリッド・バッテリーを使用して系統に接続すると、一日の発電分を一旦バッテリーに蓄電したあと、翌日に24時間かけて放電するので時間当たり放電量は、南中時最大発電量の3分の一から4分の一に減少する。(図1参照)
(図1)
20MWと30MWと40MWの発電装置がハイブリッド・バッテリーを使用すると23MW~ 30MWの系統を準備すればよい。系統容量を 大幅に下げることになる。
バッテリーを使用しない太陽光発電の場合、1年間の内の最大発電量は年に数回しか発生しないので、最大発電量の容量の系統を 準備しておくことは効率の悪い投資となる。
4.空き容量不足は局所的問題であって全体の問題ではない
電力系統を所有している一般電気業者(電力会社)で、空き容量の不足している系統が存在しないところはない。どこの電力会社でも、少なくとも一部で容量が不足している系統は存在している。
しかし、すべての系統で容量が不足している状態ではない。容量不足はない。
5.ドイツの系統接続の方法を日本に適応するのは危険すぎる
新聞や放送などの多くのメディアがこの「空き容量問題」を取り上げているが、ほとんどが正しく問題をとらえていない。間違った取り扱いをしている。
大学の専門の先生が間違った論文を発表するので、メディアが間違えるのは致し方ないのか?
資源エネルギー庁は系統容量対策として「コネクト&マネージ手法」採用の方向で検討している。この方法は、系統線は通常用と緊急用で構成されているが、再エネ用に緊急用を一部開放するが、緊急時は再エネをストップして緊急用に使用するという方法である。
NHKもこの「空き容量問題」を取り上げ、「コネクト&マネージ手法」を紹介し、ドイツでは「緊急用を持たないが何も問題はない」とドイツ人技師の発言で締めくくっていた。
「再エネ先進国のドイツがやっている通りにやれば間違いない」という非科学的、非論理的な思想が日本に蔓延っている。
ドイツの真似は危険
ドイツではうまくいっていても日本では危険なこともある。
この緊急用の考えは、その危険の最たるものである。その理由を簡単に説明する。
(1)ドイツには緊急時に支援してくれる国が9か国ある。日本はどこも支援してくれない。
日本には陸続きで電力を連携している隣国はない。
ドイツには陸続きで電力を相互連携している国が9か国ある。(図8.22)
フランスは6か国ある。(図8.23)
ドイツ国内の系統線は、メッシュ状に配線されているためどこからどこにでも電気を送電できる(蜜結合)
日本の場合、電力会社間の連携は、くし刺しのような細い連携線(疎結合) で結ばれて
いる。(図8.24)
電力会社間はメッシュ状には結ばれてはいないので、柔軟な連携ができない。例えば、九
州から北海道へ直接の連携はできないので、中間の電力会社を経由しなければならない。
「コネクト&マネージ手法」では緊急時は再エネの接続を中止するので、九州から北海道
に送電するときは、中国から東北までの再エネの発電は「出力抑制」となる(?)
ドイツは陸続きの連携が9か国でおこなわれているが、実際にはどの程度の連携量である かを見てみよう。
ヨーロッパの28国(ユーロー非加盟国も含む)の年間発電量を国別に見ると図8.25となる。その図でドイツはヨーロッパ全体の19パーセント、5分の一を占めていることが分かる。別の言い方をすると、ドイツは隣国の電力をバックアップ電源とみなすことが出来る。そのバックアップ力は自国の発電能力の4倍の発電能力を持っていると考えることが出来る。
ドイツと9か国とが実際にどの程度連携しているかは、(図8.26)に国別の連携量が表示されている。図の中で0GWより上はドイツからの輸出を表し、下の部分は隣国からの輸入を表している。現時点では、輸出の方が圧倒的に多い。9か国との連携率は5パーセントから20パーセントになる。
ドイツは自国内に緊急用としてバックアップ電源や系統の空き容量などを確保しなくても緊急時は問題なく対応できる。隣国の存在しない日本には出来ない話である。
(図8.25) (図8.26)
(2)ヨーロッパ人は傘を差さない。
ヨーロッパ人は傘を差さないといわれるが、傘を差さない理由は「傘を差さなければならないほどの雨が降らない」からである。
それに比べて日本は雨が多い。地方によっては「1週間に10日雨が降る」とか、「弁当忘れても傘は忘れるな」などと揶揄されている。
日本は場所と季節とその年とで降水量が異なる。降水量の多い地区は鹿児島や高知県である 。鹿児島は梅雨の6月に700ミリと、ベルリンの一年間の降水量に匹敵する。日本海側の輪島は冬に降水量が多い。(図1)
東京は比較的雨の少ない地区だが、台風の多い9月と10月に多く降っている。
東京の1年間の降水量と、ヨーロッパの代表的な都市の降水量を比較する。(図2)
図2をみるとヨーロッパは、台風も、梅雨も無い穏やかな気候であることがわかる。
降水量が1年間を通して月間50ミリ前後で、大きくは変動しない。
気温についても夏に30度以上になることは殆ど発生しない。従って冷房需要がないので夏が電力需要のピークになることはない。
穏やかな気候であることが、電力の1年間の発電量にも表れている。
ドイツ(図13)と東京電力(図14)の1年間の日別発電量
(出典)ドイツ;Agorameter 東京電力;東京電力HPより発電実績
日別発電量を見ると東京電力1社の日別発電量が全ドイツの発電量より多いのは驚きである。
ドイツは1年を通してなだらかに推移しているが、東京電力は激しく変化している。
以上のことからドイツについての結論
①ドイツは天気の激変が少ないので、緊急対応の頻度は極めて少ない。
②再エネが増えても悪天気のためのバックアップ電源の必要性が少ない。
③気温の変化に対応する発電予備力も大して重要ではない。
ドイツでは、天気の変化に対応するための緊急用対策は日本ほどには重要ではない。
ドイツで緊急用は必要ないとしても、日本は緊急用やバックアップは日本独自の方法を確立しなければならない。
(3)ユーロー諸国に太陽が居座る
日本の最北端の稚内は北緯45度27分であるが、同じ緯度にあるユーローの都市はイタリアの北部のミラノである。本州の最南端鹿児島の佐多岬は緯度30度59分で、エジプトのカイロは緯度30度2分でほぼ同じである。
(図15)
ヨーロッパの標準時間は3種類がある。
最東端のギリシャ近辺の東ヨーロッパ時間、真ん中がベルリンやパリの中央ヨーロッパ時間、最西端がリスボンやロンドンの西ヨーロッパ時間である。それぞれに1時間づつの時差がある。
日本の場合の標準時間は1種類だけである。だから北から南まで一斉に仕事を開始するし、一斉に昼休憩になり、一斉に終了時間になる。
全国一斉に同じ時間に電力の需要が始まり、一斉に需要が少なくなる。
また、太陽光発電も∓30分程度の差はあるが、全国一斉に南中時の最大発電量に到着する。日本全域が晴天の時に、北海道で太陽光発電で需要を超過するほど発電してしまった場合、南の九州でも同じ時間帯に供給過剰になっている。
ユーローの場合、最東端のギリシャ地区で最大発電の南中時になったとしても、最西端のリスボンでは午前9時であるため太陽光発電はやっと立ち上がったばかりで最大発電にはなっていない。ギリシャでの供給過剰をリスボンで受け入れる余力はある。
ユーローでは一斉に南中時になることはない。南中時の時間帯は3+1+1の5時間に、ユーローのどこかで、太陽が高高度のままで居座っている。また電力需要のピークも東端と西端では3時間のずれがあるため、一斉にピークになったり低くなったりはしない。
日本ではほぼ一斉に南中時になったり、一斉に需要がピークになったり低くなったりする。さらに、日本にはユーローにはない梅雨や台風や地震など独自の事象がある。
日本独自の緊急対策や、バックアップ対策や、供給過剰対策などが必要である。
ドイツの真似ばかりしていては解決できない問題である。
(4)ユーローが一斉に休暇に入るのはクリスマス休暇だけ
日本の祝祭日は北の北海道から南の沖縄まで一斉に休日になり、電気の需要も一斉に低くなる。
しかし、再生可能の発電は休日にお構いなく発電する。休日に、供給が需要を超過する確率が高くなる。したがって、出力抑制の確率も休日に多くなる。
ユーロー諸国が一斉に休日になるのはクリスマス休日だけで、そのほかの日は一斉の休日はならない。また、一つの国でも、州ごとに休日が設定されている国が多いため、一つの国だけでも一斉に休日になることが少ない。
たとえ、休日になる国が多くなっても、供給過剰分は多国間連携で対応できている。
日本では、隣国もないし、同じ国内でも一斉に休日になるため連携で対応することは困難である。
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