経産省に"喝"、もっと研究せい!!
「再エネを主力電源化」は実現せず
資源エネ庁HP掲載の『再エネの発電量を抑える「出力制御」、より多くの再エネを導入するために』を
https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/kyushu_syuturyokuseigyo.html
を読んで、思わず " 経産省に喝!!"、つづけて"もっと研究せい!!"と叫んでしまった。
理由は、
1.再エネ拡大の将来に対する危機感が完全に欠如している
出力抑制技術があるから大量の再エネ導入が可能で、主力電源化ができると妄信
2.論理的な詰めが甘い
☆ 「出力抑制」方法 ・・・ 再エネ化率は30パーセントを超えられない
☆電力間連携 ・・・ 3年後は、日本全国需要超過状態で連携効果なし
☆発電コストの問題 ・・・ 発電した電気を毎日50パーセントも捨てる方が問題
3.将来の再エネ拡大の道筋が見えない
4.「エネルギー革命」を引き出すほどのチャレンジ精神の欠如
1.将来に対する危機感が完全に欠如している
(1)「出力抑制量はほんの僅か」と・・・ホント?
経産省資源エネルギー庁HPの内容(抜粋)全てを読みたい方は直接経産省のHPへアクセスしてください。
HPの説明では出力抑制は『(前略)今後、涼しくなって電力消費が減少していくと、出力制御がおこなわれる可能性が高まります。たとえば、多くの電気を使う⼯場などが休みになる週末で、あまりクーラーも使われなかったので電⼒需要が大きく下がったという場合や、(中略)と いったような場合、太陽光の出⼒を抑える必要がでてくるかもしれません』と言って、(図1)を使用して抑制対象は少ないことを強調してます。
『(図1)では左側の<需要の大きい日>には太陽光発電は需要を超過して いないので出力抑制にはなりませんが、右側の<需要の小さい日>には 供給が少しだけ超過するので超過した分だけ出力抑制となります』ここでは抑制対象はごく少量であると強調している。
(2) 現実の抑制量はそんなもんじゃ無い
本当にそんな程度か?
九州電力が現在承認済みで3年後には稼働するはずのものが稼働した時の抑制量を計算した。結果を(図2)に表示する。
詳細は ⇒⇒ 「再エネの主力電源化」は「国策詐欺」だった
(図2)
なんと、発電した分の71パーセント54GWhが捨てられてしまう。
四国電力の一日分を捨てているのである。
経産省の出力抑制量に対する考えが非常に甘い事が分かった。
(3)「発電所の売電収入はどれだけ減るのか?」に無関心
「無制限・無保証の出力抑制」で一番怖いのは、抑制の量ではなく、発
電業者の年収にどれだけ響くかである。
どれだけ減るかについて経産省は下記のとおりに説明している。
『新たにビジネスを始める再エネ事業者にとってみれば、どの程度出力
制御がおこなわれるかということは、事業性を判断する上で大変重要な
情報です。このため、九州電力を含む電力会社は、国の審議会(中略)
や各社のホームページにおいて、再エネの導入実績や今後の出力制御量
・時間の見通しを公表しています。(中略)さらに、「出力制御対応訓
練」を複数回にわたって実施し、再エネ事業者との連携強化に努めてい
ます』
経産省の説明には具体的な年収減については触れてません。
主張しているのは十分審議したし、各社が見通しも発表したし、訓練ま
で行ったので、例え大幅の減収があっても経産省には責任はありません
と言ってるようです。
弊社の予測結果は、
年間売電収入の平均46パーセント~最大62パーセント程度の
収入減となる。
ここで注意しておくべきことは、減収となるのは新規に発電開始
した発電所だけでなく、これまで順調に収入を得ていた古くからの
発電所も公平に減収になる事である。
詳細は ⇒⇒ 「再エネの主力電源化」は「国策詐欺」だった
2.論理的な詰めが甘い
(1)出力抑制してるのに「再エネの主力電源化」は出来るのか?
電源には、原子力、火力、再エネの3種類がある。主力電源というか
らには、3種類の中で一番多く使われていなければならない。常識的
に考えて、40パーセント以上使用されているものと考える。従って、
再エネ化率は40パーセント以上が必須となる?
弊社はじめ再エネ事業に携わっている方たちのほとんどは、この出力
制御方式で「主力電源化」が達成できるのか疑問に思っている。
それに対して経産省は
『再エネを主力電源化していくためには、既存の電源・ネットワーク
と調和させ、しっかりと根付かせていくことが重要です。出力制御は、
まさにこのための手段なのです』
と自信満々で、この出力抑制が原因で達成できないとは、夢にも思っ
ていないようである。
弊社は九州本土の抑制実績から太陽光が2倍近く導入される3年後を
計算し「この出力抑制では主力電源化は不可能である」と判断した。
現在九州本土では太陽光853万kW、風力51万kW、その他143
万kWが稼働中である。19年3月1か月間の実績では太陽光の抑制
は68GWhで発電量の6.8パーセントしか抑制されていない。
再エネ化率も25パーセントだった。
しかし、承認済みの太陽光702万kW、風力万295kW、その他15
万kWが、追加される3年後を計算する(図3)と、再エネ化率は
27.3パーセントにしかならない。2倍の太陽光が稼働するにも関わ
らずである。
もし、出力抑制が全く無く、再エネが発電した分が完全に取り入れられ
ていたら、3年後の再エネ化率は42パーセントになっていたはずであ
る。その時は立派な「再エネが主力電源」と、世界に向けて胸を張れた 筈だ。
再エネ化率が増えない原因は、871万kWhも捨てて、発電量の半分の
49.9パーセントが抑制されるからである。また太陽光が2倍になる
のに有効発電量が減ってしまうのは、現在は抑制時間が午前9時から
16時までであったが、増加後は日の出と同時の午前6時から日没18
時までに拡大されるからである。
(図3)
少なくとも、再エネを主力電源化するというのであれば再エネ化率は
40パーセント以上であるべきである。しかし、太陽光中心の日本では
どんなに太陽光を導入しても30パーセント以上にはならないことが
はっきりと証明された。
経産省は『出力制御は、まさにこの(再エネを主力電源化する)ための
手段なのです』と堂々と主張しているが、「どこが…?」と言いたくな
る。
弊社は「出力抑制が、再エネの主力電源化の最大のガンである」と主張
する。
詳細は ⇒⇒「再エネの主力電源化」は現在の出力抑制方式の下では
(2)発電コストの問題
平成30年7月に閣議決定した第5次エネルギー基本計画で「再エネを
主力電源とする」ことになった。
そのための最大課題を「コスト競争力」と宣言していた。
「コスト競争力」を高めることで、関連コストがグーッと下がることを
弊社は大変期待した。コストの中でも、出力抑制は晴天日に発電した電
気を最大70パーセントも捨ててしまうので、コストの中でも最大の
コストであるから、真っ先に出力抑制がコスト削減として取り上げられ
るであろうと期待していた。
しかし、『出力制御は、まさにこの(再エネを主力電源化する)ための
手段なのです』ということで、全く改善の必要性に気付いていない。
最大課題ですら解決できない経産省に「再エネの未来」を託せるのか?
(3)電力間連携 ・・・ 3年後は、日本はどこも需要超過状態
FIT制度が出来てからは、あっちこっちで回線容量増設要求の声を聴く。
高名な経営者や学者であったり、自称コンサルタントや政治家や大企業経
営者などなど・・・。
特に、出力抑制に関しては電力間連携線の容量を増やせとの声が強い。
超過分をどこかに送れば処理して貰えると思っているらしい。
現在、九州の超過分は関西電力が処理をしている。関西は九州以外の四国
電力の分も処理をしている。そのおかげで四国は抑制から逃れている。
東京電力は東北電力の分を処理しているので、東北には出力抑制は発生し
ていない。
区間連携線の増設は、超過分を引き受けてくれる所が有れば有効だが、無
ければ何の意味も持たない。
現在は、中央3社の大電力会社が引き受けているが、3年後にはその3社
自身も再エネ導入が2倍になり、更に原発の一部が稼働し始めるなどで引
き受けの余裕はなくなる。(図4)
また3社の電力需要が、オリンピック後の不景気や太陽光の自己消費増加
で大幅に減少する危険性も高い。需要が落ち込めば、後は出力抑制まっし
ぐらである。
3年後には、出力抑制解消のための連携線容量増設は全く効果がない。
(図4)
3.将来の再エネの道筋が見えない
今の「出力抑制」では再エネ化率は30パーセントを超えられない。
主力電源と言うからには再エネ化率は40パーセント以上でなければ
ならない。
なぜ超えられないかは、現在の出力抑制の考え方が、「超過した分を
切り捨てる」からである。
太陽光発電を無限に導入するためには発想の転換が必要である。
それは「発電したものは総て生かす」に切り替えることである。
それには「ハイブリッド・バッテリー・システム(HBBS)」を使用す
るしか無い。
(1)ハイブリッド・バッテリー・システム(HBBS)使用で
系統接続方法変更
太陽光発電の発電量は太陽が真南に来る南中時が最大の発電量となる。
太陽光発電の導入量が増えると増えた分だけ、南中時の発電量が増える。
決して横には広がらない。ただひたすら上に伸びるだけだ。増え続ける
と、需要と言う天井を突き抜けてしまう。(以下、タケノコシンドロー
ム)需要を超えると出力を抑制しなければならない。
晴天日に発電した電気をいったん蓄電池にためて発電終了から24時間
かけて均等に放電すると、1時間当たりの放電量は南中時の最大発電量
の3分の一から4分の一になる。(図5)
(図5)
1つの発電装置に1組の蓄電池を接続させる。
1組とは任意の数の蓄電池で構成され、接続された発電装置の一日当た
りの発電量を収容出来、かつ放電と蓄電の同時並行処理が可能な装置で
ある。(図6)
(図6)
発電装置で発電した電気を、直接電力系統に送電せずに、一旦、蓄電す
る。放電は、発電終了後の午前0時から前日に発電した量を24分の一
づつ均等に24時間かけて行う。
放電開始時刻は、翌日の系統制御開始時刻(通常は午前ゼロ)で、終了
時刻はその24時間後になる。
九州では今年3月24日に出力抑制があった。同じ気象条件で3年後に
太陽光が750万kW増加した場合を計算すると、発電したものの60
パーセント近くが出力抑制として捨てられる。(図7)
それに対して、全ての太陽光にHBBSを接続し、発電終了後から24時
間かけて放電すると、全く抑制の必要なく、電力として使用される。
その日の再エネ化率は、57.8パーセント(含水力)となる。(図8)
原発も止める必要がない、火力は最低出力で発電する。需要超過分は
グリッドストレージ(GSTRG)に保存するので、揚水発電も他社連携
も必要としない。
系統制御を行う電力会社にとっては、発電予測も出力抑制に関する一切
の作業もなくなるなどの運用コストの大幅の削減ができる。
現在の系統接続の場合 (図7) HBBS/PVSS使用の場合 (図8)
(註)HBBSの使用は、新規に導入する2MW以上の産業用太陽光に最適である。
自己消費のある発電には適応不可。すでに稼働中は、パワコン不要と
か、接続変電所変更などでメリット無し。
(2)グランド・デザインがない
IOT時代、すべてのものがネットワークに繋がる時代である。
ネットワークに繫げるとは、巨大なコンピュータシステムに
繫げることである。コンピュータシステムであれば確りとした
設計思想が必須となる。しかし、経産省のエネルギー基本計画
には再エネの主力電源化を行うための確りしたグランドデザイン
(設計思想)がない。
①理想的な『再エネを中心とした設計思想』
第一階層の保障;すべての太陽光発電を、出力抑制も無く、天気通りに
発電出来ることを保障する。(接続保障・発電保障)
第二階層の保障;天気に左右されることなく約束通りの量の給電を保障し、
ベース電源として保障する。(安定給電保障・調整力保障 )
第三階層の保障;24時間放電中に需要超過することがあっても需給バランスの
維持を保障する。(需給維持保障)
第四階層の保障;地方で生産した格安の電気を都会地に安定した形で供給する。
地方の活性化と、都会に地方並価格の電気供給を保障する。
(地産都消)
②システム構成
太陽光発電保障システムは現在稼働中の系統制御システムを補完しながら、
ハイブリッド・バッテリー・システム(HBBS)を制御する。
天気に左右されない供給は、グリッド・ストレージを調整力として使用す
る。
(3)「再エネ主力電源化」の道筋(工程表)
東京電力をモデルの「再エネ主力電源化」の道筋(工程表)
①現状
再エネ導入量で電力10社中最大であるが、再エネ化率では10社中ビリ
である。
日本の再エネ化率は先進国の中でも最低で、その足を引っ張っているのは
東京電力である。
⇒⇒ 世界の再エネ化率競争で大きく遅れている日本、足を引張っているのは
②現在受け付け済みが稼働する3年後
受付中で未稼働分の10.9GW(太陽光7.9GW、風力1.13GW、
他)が稼働し始めた時、すなわち再エネが27.6GWになっても出力抑
制は発生しないが、再エネ化率も9.4パーセントにしかならない。
③エネルギー計画の再エネ化率達成
「エネルギー長期計画」で、日本全体の再エネ化率を22~24パーセント
と設定しているので少しでもそれに近づけるために、東京電力を30パー
セントに高める。
そのためには太陽光を40GW、風力を1.5GWが必要である。
結果、日本全体の再エネ化率は16.6パーセントにしかならない。
しかし、その時、東京電力にも出力抑制が現在の九州本土並みに発生(図
7.1)している。この図は5月のゴールでウィーク期間の抑制状況をグラフ
化したもので、白の部分が抑制される部分である。
(図7.1)
5月1ヶ月間の日別発電状況を(図7.2)に示す。
1ヶ月で26回の抑制で、抑制のなかったのはPV抑制欄が0になっている
14日、21日、28日、29日、31日の5日だけである。
東京電力は需要が大きいから抑制が発生しないというのはデマにしか過ぎ
ないことがお分かりになるでしょう。
(図7.2)
他の電力会社が頑張れば、日本全体は辛うじて22~24パーセントにな
る。
ただし、日本全国どこに行っても九州本土並みの出力抑制が発生してい
る。
④再エネを主力電源にする
東京電力は再エネを主力電源にすると公約している。主力電源であるから
には他の電源よりも比率が高くなければならない。現在、電源の種類は、
原子力と火力と再エネの3種類しかない。(水力は再エネに含む)3種類
の中で主力であれば少なくとも40パーセント以上は必要である。
しかし、30パーセント以上は、現在の系統接続方法では不可能であるこ
とは、九州本土の実績を見ても理解できる。
したがって、40パーセント達成のために太陽光発電保障システム
(PVSS/HBBS) の系統接続技法を導入し、54GWの太陽光を天気に左右
されない形で導入する必要がある。またこのシステムのおかげで出力抑制
は一切発生しなくなるので、安心して東京電力向けの太陽光に投資できる
ようになる。
また、原子力発電と共存しても、出力抑制は全く発生しない。原発が消え
るまでは原発側も太陽光側も安心して稼働できる。
⑤価格競争に最低コストの太陽光で対応
電力完全自由化以来、東京電力は500万件の顧客が競争相手に奪われて
いる。奪われた結果、毎年5000億円の利益を出すと約束した長期計画
も2千億円以上もショートしている。奪われた原因は総て価格競争であ
る。逃げた顧客は月700円電気料金が安くなるといわれ、喜んで乗り換
えている。顧客にとっては、切り替えても電気の品質が落ちるわけでもな
いし、サービスが低下するわけでも、振込先が変わるわけでもない。完全
に料金だけで決めている。
競争に勝つためには料金を下げるしかない。これまでは料金を下げるのは
原子力だと言っていたが、太陽光のコストが原発より下がった現在は、太
陽光を他社より多く導入して価格競争に備えるしか方法がない。
当面は60パーセントの再エネ化率を目指す。その実現には太陽光は
81GWが必要になる。現在稼働中12.5GWの7倍に相当する。
ここで新たな問題は、東京電力供給域だけでそれだけの土地を確保するこ
とは困難である。そのためには地方の土地を利用する「地産都消」のコン
セプトが必要になる。
北海道や東北、九州の地方に設置した太陽光の電気を直接買い取ることに
なる。
⑥40年ルールで廃炉後を再エネで賄う
40年ルールを適応すると30年の初めに東京電力の原発は、東通発電所
を除くと完全に消えてしまう。(図8)原発発電分を太陽光で補わざるを
得ない。
(図8)
福島第一の原発事故以降、安全対策費が予想をはるかに上回って、発電
コストにまで影響し始めている。当初予定の10倍越えも多い。
(図9)
(出典)日本経済新聞 電子版
また30年頃には太陽光の単価はKW当たり6円とか7円になっているの
で、電力自由化でますます価格競争が激しくなるので今後は、原発を選択
することはなくなる。
原発の廃炉に代えて、太陽光48GWを追加し、108GWとする。
その追加で、天気に変動する量が大きくなるので更に大きな調整力が必要
となる。
その調整力はグリッド・ストレージが提供する。再エネ化率80パーセン
トになる。グリッド・ストレージの導入は、エネルギー関係の新しいビジ
ネスとして新規参入者に委ねることも可能である。
⑦EV(電気自動車)普及後の電力需要拡大に対応する
30年代後半にはEVが普及している。EVに化石燃料で発電した電力を供
給したのでは意味がない。そのためには再エネが頑張らざるを得ない。
その時、さらに大きな調整力が求められ、液体水素などで保存し、その水
素で新たなビジネス展開が期待できる。その時太陽光は162GWが必要
だ。
4.「エネルギー革命」を引き出すほどの
チャレンジ精神が皆無
(1)世界に先駆けた技術開発のチャレンジ精神に欠ける
経産省は再エネ先進国に右に倣えしてるだけだ
(2)日本固有の問題に取り組んでいない
日本は風力発電の適地が少ない。太陽光に頼らざるを得ない。
日本は、全国を10地区に分割し、地区毎に需給バランスを調整する
ので、ちょっと太陽光が増えるとすぐ超過となってしまう。
日本は南北に長いが東西は狭い。南中時の最大値は±30分内に全国で
集中する。
日本に標準時間は1種のため、日本全国一斉に12時になる。需要ピーク
が重なる。
日本には陸続きの隣国がないため、日本だけで需給バランスの調整を
せざるを得ない。
(3)審議会
出力抑制技法について突っ込んだ議論をしていない
最後までご精読ありがとうございます。ご質問、ご感想、反論等
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