VPP(仮想発電)の、出力抑制解消は、期待ハズレ
FIT価格の低下で、売電から自己消費への転換が増えると、
自己消費には蓄電池が必須のため、蓄電池の導入が増える。
出力抑制の原因は、需要を供給が超過するからであるので、
超過分を自己消費者の蓄電池に避難すれば出力抑制が解消できる。
・・・・と信じている輩が多い。
本当に、VPPで出力抑制が解消出来るのか?
(2018/3/23)
1.需要超過量はどれだけあるか?
九州電力の場合、現在認定受付済みで未稼働のものが稼働するであろう
3年後の閑散期である5月3日の需要超過分は200 GWh になる。
この超過分は揚水発電や他電力への連携を最大限対応させた後の量である。
(図1)
VPP(仮想発電)とは
バーチャルパワープラント(以下VPP)は、点在する小規模な再エネ発電や蓄電池、燃料電池等の設備と、電力の需要を管理するネットワーク・システムをまとめて制御することを意味する。
VPPがもたらす効果は
・再生可能エネルギーの導入拡大
・更なる省エネルギー
・負荷平準化
と言われている。
「再生可能エネルギーの導入拡大」が可能な理由
FIT価格が低下した結果、売電よりも自己消費の方が利益の確保がしやすくなる。自己消費には、不安定な太陽光発電を十分に使いこなすために、適切な容量の蓄電池が必要となる。
この蓄電池を、出力抑制の原因となる需要超過分を少なくするために、自己消費のために設置した蓄電池を使用すれば、一石二鳥の効果が出る。
バーチャルパワープラント構築実証事業
2016年(平成28年)から2020年(平成32年)までの5年間
出典 ⇒⇒ 種子島を食いつぶした妖怪が、九州本土に上陸
2.VPPに使用できる蓄電池の容量はどれだけあるか?
200GWhの需要超過を受け入れることが可能な蓄電池は系統上に存在しているか?
現在稼働しているものと、3年以内に稼働するであろう太陽光発電に蓄電池を導入したと想定した場合の蓄電池の容量を、九州電力に限定して下記の手順で計算する。(図2)
①2MW未満の太陽光発電は全て自己消費に移行する。
2MW以上はHBBS使用の発電を行うのでVPP対象外となる。
②自己消費には蓄電池が必要となり、その容量は晴天日一日の発電量を蓄電できる容量が必要(容量の5倍とする)
③VPPに使用可能な蓄電池の合計容量は、44.9GWとなる。
(図2)
3.VPPに使用できる時期と、その時の蓄電池の容量
現在契約しているFIT単価は圧倒的に高く設定されているので、発電業者は大いなる利益を享受している。したがって、期間終了するまでは契約変更は有り得ない。VPPに参加するのはFIT契約期間終了後となる。契約終了順は
①10kW未満の家庭用
FIT制度以前から使用していた10年契約の家庭用から自己消費への移行が始まり、12年以降に契約し、且つ10年経過した家庭用が22年からVPPへ参30年までに最大で8.5GWhとなる。
②FIT契約期間20年の産業用は、FIT期間が一番早く終了する32年からVPPに参加、遅い者は38年から参加し、全産業用で36.4GWhとなる。
③家庭用と産業を合わせて44.9GWhになる。ただし、その時期は38年頃から10年はかかる。
(注)★自己消費用に導入した蓄電池の全容量を需要超過対応に使える分けでは
ない。蓄電池容量の半分程度が需要超過対応に使えると想定する。
★自己消費に移行すると、電力会社から購入する電力は減少するので、出
力抑制が増加することになる。
★逆に、自己消費に移行すると再エネの供給量が減ることになるので、
需要量が減少する事にもなる。
4.その時、出力抑制は無くなるのか?
①現時点(19年)から32年頃まで
FIT期間が10年の家庭用が終了し、自己消費に切り替える。その時導入する蓄電池が8.5GWh程度になるが、VPPとして利用できるのは半分の4.0GWh程度と想定した。その時の出力抑制が減少する効果は、200÷4で2パーセント程度の抑制減少となる。
②産業用のFIT期間が終了し始める32年から48年ころまで
産業用と家庭用合わせて44.9GWが、自己消費に切り替える。VPPとして利用出来るのは半分の22.0 GW程度と想定した。
その時の出力抑制が減少する効果は、200÷22で11パーセント程度の抑制減少効果となる。
5.結論
VPP使用で出力抑制が少なくなり始めるのは、VPP実証事業が終了する22年以降で、その効果は2パーセント程度にしか過ぎない。2パーセント程度は32年ころまで続く。
32年ころから48年に向けて出力抑制が11パーセント程度まで増加すると期待される。
ただし、30年過ぎには30パーセント以上の省エネ効果が計画されているので、VPPによる出力抑制縮小効果の11パーンは疑問に思われる。
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