北海道のブラックアウトは、

石炭火力で利益追求が原因!!

(2018/9/27 掲載)

石炭火力は地震、津波、高潮、洪水の自然災害に弱い。

北海道のブラックアウトは、石炭火力で利益追求が原因!!

そんな石炭火力をベース電源に使用した結果のブラックアウトだ。

この事故を教訓にして、「電気は貯めてから使う」コンセプトのもとに、

大規模自然災害に強いIoT時代のバーチャルパワープラントを構築すべきである。

Ⅰ.ブラックアウトに至るまでの経緯


(1)停電した9月6日の稼働は(図1)のようになるはずだった。

図1は昨年(2017年)の発電実績のままでのグラフである。

昨年の天気実績に今年の予想天気をぶつけて需要予測を行う。

昨年の天気と今年の天気を比べる(図3)と、今年は昨年よりやや晴れが多く、気温は2度

前後高めである。そのことから電力需要は昨年よりやや多めであると予想される。

再エネの1年間の導入状況を見る(図4)とほとんど増加していない。従って本年の再エ

ネ発電はほぼ前年と同じと見なせる。

その結果から6日の稼働想定を行い、系統制御を行っていた。(図2)

去年と今年の9月6日の天気比較( 図3) 昨年9月6日実績(図1) 再エネ導入容量(図5

(2)ブラックアウト発生とその対応


しかし、午前3時8分頃に震度7の大地震が発生し、苫東厚真(とまとうあつま)火力発電所の1 号 機(35 万 kW)・2号機(60 万 kW)は、蒸気漏れが発生、4 号機(70 万 kW)は、タービン付近から出火した。 (発電所近辺の震度は3程度)

9月月日の稼働状況事故発生により直ちに、1号機、2号機、4号機の発電を止めた。停止後、図2を見ると18分間は122万kWが稼働している。グラフで見ると1時間に見えるが、実際には18分間だけ稼働していた。この18分間は122万kWが稼働していたのだからこの間に、待機中の他の火力発電所、又は水力発電所を立ち上げればブラックアウトならなかったのではないかと疑問に思う。(東北電力との連携線は60万kWであるので連携しても100万kWは不足である)


障害発生時の対応で問題点

①バックアップ電源の選択

緊急停止した発電機に対するバックアップ電源として選択した発電機もまた石炭火力ではなかったのか?

石炭火力の立ち上げに要する時間は、待機状態でも異なるが18時間以上を要する。石炭火力発電以外に待機している発電機がなかった?

②太陽光発電

昨年同日の太陽光の最大発電量は80万kWhあったが、それは昼の12時であった。

午前3時は日の出前で発電量はゼロのため、バックアップとしては使用できない。

当日の稼働状況(図2)を見ると午前3時の発電量は急激に165万kW減少し、100万kWで17分間、稼働していた。

9月6日の稼働予定と実績(図2) ほくでんの汽力発電所(図5) 電源別発電コスト (図6)

(出典)北海道電力「でんき予報」

経産省などは、今月6日未明の北海道地震発生から道内全域のブラックアウトに至るまでの

18分間の北海道電力管内の周波数の推移などのデータを公表した。(図2.1)

それによると、6日午前3時7分の地震発生直後に主力の苫東厚真火力発電所2号機(最大

出力60万キロワット)と4号機(同70万キロワット)が緊急停止した。供給量が急激に

減少したことで、通常時は50ヘルツで安定している周波数は急低下。その影響などで道内

全域の風力発電や水力発電も連鎖的に停止した。1分足らずで、地震発生前の電力総需要

310万キロワットの半分近い供給力が失われたとみられ、周波数は一時46・13ヘルツ

まで急落した。

しかし、ここから想定外の事態が発生する。停電しなかった地域では、地震で目を覚ました

住民らが照明やテレビをつけるなどして需要が急伸し、再び周波数が低下し始めたため、北

電は残存する火力発電の出力を上げて対応。3時20分ごろには、苫東厚真火力1号機

(35万キロワット)の出力が低下し、再び急激に周波数が低下したため、2回目の負荷遮

断を実施した。 (毎日新聞より)

9月6日の稼働予定と実績(図2.1)防潮堤なしの苫東厚真火力発電所(図7) 石炭火力発電所 (図8)


(出典)毎日新聞 ( 画面をクリックすると拡大表示します)

3)ブラックアウトに至るまでの問題点

(地震に弱い石炭火力発電の潜在的問題点を指摘)


①野ざらしの石炭火力固有装置

★LNGに比べると装置の数が多く、故障の確率も高く、建設コストも高くなっている。

微粉炭機、石炭コンベア、石炭ホッパー、灰貯留ホッパ、燃焼ボイラー、

電気集じん器、排煙脱硫装置、排煙脱硝装置など

★装置は屋外設置のため潮風などで故障を早める危険性が高い(図7)(図8)

②ボイラーおよび蒸気タービンを超々臨界圧で運転する石炭火力の特性のため地震に弱い

欠陥がある。

超々臨界圧(蒸気温度593℃以上、蒸気圧力24.1MPa以上)でボイラーと蒸気タービン

を使用のため故障しやすい(今回の故障はこの部分だった)

③使い続ける宿命を背負った石炭火力の発電単価

発電単価は石炭火力が一番安いと言われている。(図6)

しかし、この安さは設備利用率が高い時であって、利用率が60%より低くなるとLNGを

使用した方が安くなる。(図9)したがって、石炭火力は使い続けなければならないと

いう宿命を背負っていた。だから、当然、一日24時間稼働するベース電源として使用

されることになったのである。

ほくでんでは苫東厚真発電所の3台の合計165万kWをベース電源として使用していた。

(図9)

(出典)資源エネ庁発電コスト検証WG ( 画面をクリックすると拡大表示します)

④立ち上げ・停止に長時間/低い下げ代機能

石炭火力は立ち上げ時間に長時間がかかる

ボイラーやタービンの温度の下がり具合で立ち上げ時間が異なる。

●夜間だけの停止 ⇒ 起動指令から2~3時間程度

●週末だけの停止 ⇒ 起動指令から2~3時間程度

●1週間以上の長期停止 ⇒ 起動指令から20~25時間程度

下げ代機能も低い

LNG等の火力は30%程度まで下げることが可能であるが、石炭は50%が限界

⑤CO2排出量

日本はじめ世界中でCO2排出へ反対の声が強い中で、敢えて石炭火力をベース電源とし

て使用している。


(4)近い将来にクローズアップされるであろう石炭火力の問題

①ますます大規模化する自然災害に石炭火力は耐えられない


近年、自然災害は規模を大型化している。南海地震など大型地震が予想されている。

ほくでん以外の石炭火力発電は全て、石炭輸送に適した海岸沿いに建設されている。

北電の苫東厚真発電所は、海から10メートル近くに位置し、防潮堤もなく海抜2~

3メートルの高さしかない。

関西空港の最大風速60メートル、干潮と満潮の間であったが、3.1メートルの高潮が

発生し、潮位は大阪工事基準面(OP)より5.1メートル高くなった事例からも推測で

きるが、ひとたび大型台風が襲来したら、発電所自体が水没することは間違いない。

地震台風襲来で、日本全国のあちこちでブラックアウトが襲う。

②一番安いはずの石炭火力は、近いうちに太陽光の価格に置いて行かれる

石炭火力を世界中の非難に耳も傾けずに推進している理由は、発電コストが他の燃料

より安いという一点だけであった。安いと言ってもkWあたり1円前後の安さである。

再エネの中でも太陽光は一番安く現在18円であるが、2030年には7円になると

資源エネ庁が発表している。その時、太陽光は石炭の半分になる。

その時も、石炭は一番安いというのだろうか?

2030年はまだ先ではなく、近々の問題として取り組むべきである。


(5)近いうちに北海道以外で、再びブラックアウトは起きるか?


再びブラックアウトは起きます。

北海道も含めた日本全国の石炭火力で発電している地域で起きます。

●同規模の余震が起きた時

●関西空港並みの高潮又は津波が発生した時

●大型台風の襲来で強風又は大雨があった時

♡♥♡♥ ブラックアウトを再エネ活用で防ぐ ♡♥♡♥

地震に強いハイブリッドバッテリー(HBBS)と太陽光発電保障システム(PVSS)の活用

HBBSとPVSSの使用でブラックアウトが防げる理由

理由①膨大な発電所数

50kW以上の産業用太陽光発電だけに限定すると北電は1,000件あるので、一部に障害

が発生しても問題なし。ちなみに東京電力の場合は10.000件になる。(17年12月現在) 理由 ②24時間放電

ハイブリッドバッテリー(HBBS)を使用すると発電の翌日に24時間均等放電するの

で、夜間でも太陽光で発電した電気を供給する。

前年の太陽光の発電実績(565万kWh)と、今年の天気から推定すると、事故を起こした

午前3時には時間当たり24万kW程度の電気が流れていたことになる。

これだけの電気があれば、全火力発電停止の代わりの発電所を立ち上げる起動電力と

なったはずである。北海道全域のブラックアウトは無かっただろう。

また。24時間放電と安定給電保障機能を使用して、太陽光を石炭より発電コストの安

いベース電源として使用できる。安定給電保障機能は、 天気に左右される太陽光も、事

前に約束した量を天気に左右さることなく、かつ大災害で数か所の太陽光発電装置その

ものが停止したとしても、安定的に供給できる。

(図10)

Ⅱ.ブラックアウトを防ぐ

理由 ③常時グリッドストレージ(GS)に予備電源が貯蔵されている。瞬時に切り替え可能。

また、安定給電保障機能を働かせるために、GSに、保障に必要な電気を保存している

ので、緊急時はその電気をバックアップ電源として瞬時に使用することが出来る。

バックアップ期間も、保存量に左右されるが、全域を数日間は供給できる。

図11は東京電力を対象としたGSへの保存量の推移をシミュレーションした結果である。

それを見ると、最大保存量は142GWhとなっている。太陽光発電の3日分相当である。

保存は蓄電池が一般的だが、蓄電池は価格とスペースの問題があるので、液体水素

にして貯蔵タンクに貯蔵するなども考えられる。

(図11)


150年前に電気を発明したエジソン時代から現在まで、電気は「貯めることが出来ない」と

云われて来た。

しかし、再エネ導入が進み、蓄電池コスト及び性能が改善され且つ、全てのものが通信で繋

がるIoT時代に、いつまでも「同時同量」や「太陽光発電は不安定である」とかに縛られ

るのではなく、「貯めてから使う」とか「太陽光発電は保障できる」と発想を転換して、

世界に先駆けた本格的バーチャルパワープラントを構築し、大災害に強い系統制御システム

を目指すべきである。

災害大国の日本にとっては、このような発想の転換が特に必要だ。

弊社はHBBSとPVSSを中心として、大災害に強い系統運転に貢献するため、研究に邁進いた

しております。

最後までご精読ありがとうございます。ご質問、ご感想、反論等お待ちしてます。