資源エネ庁、数年後に太陽光の電気は
原子力より安くすると発表
経済産業省資源エネ庁は「調達価格等算定委員会」を10月4日開催した。
固定価格買取制度を規定するFIT(Feed-In-Tariff)法を2017年4月1日に改正するためだ。
委員会では太陽光発電の価格目標を設定するにあたって、事業用(非住宅用)の総コストは2020年度に14円/kWh、2030年度に7円/kWhを目指すとした。
(1)「原子力発電は一番安い」は都市伝説になってしまった。
これまで政府や、経産省や、電力会社は、原発再稼働の理由の一つに「原発は一番安い」を掲げていた。その根拠を、関西電力は自社HPに電源別発電コストを次のように表示している。
2)当サイトも、
ずっーと前からコストが下がる事を公開していた
しかし、今回は政府系の資源エネ庁が公式に「太陽光発電は原子力より安くする」と発表してしまったのである。
ただ今回の発表は決定ではなく、「目指す」と方向性としている。
また、来年から一部ではあるが入札制度を導入することから、発表された総コストは入札制度化の上限価格とみるべきである。従って実際取引されるときの総コストは、発表コストより下回るものと推定できる。
当サイトでも、太陽光発電のコストが下がる事を事前に公開していた。
公開には下記のグラフで表現していた。このグラフでは主に買取価格がどのように下がるかを表現したが、今回の資源エネ庁の発表は「総コスト」であって買取価格ではないことにご注意ください。
また弊社は買取価格に合わせて「総コスト」も予測していた。それは「大量導入後の価格」として表示していた。そこでは2020年は12円、2030年は3円と予測していた。資源エネ庁より低く予測していた。
(3)太陽光発電の「総コスト」が下がるのは、世界共通の現象
太陽光発電の総コストが下がっているのは、日本だけでなく世界中のどこでも同じ流れである。
IEA(国際エネルギー機関)は加盟国のエネルギー政策を定期的に分析・評価してレポートを発行している。そのレポートの中に電源種別ごとに過去5年間(2010年〜2015年)の再エネの総コストの変化を公表した。
そのレポートを見ると風力発電やバイオ発電などは5年間に全く変わっていないが太陽光発電は半分以下に下がっている。太陽光発電は5年間で半分以下に下がった。
2010年には1000kWh当り0.285ドルだったものが5年後の2015年には0.126ドルに下がった。
図3 種類別の発電コストの変化(2010~2015年)。左から順に、水力、陸上風力、 洋上風力、太陽光、太陽熱、バイオマス、地熱。単位:USD/MWh(米ドル/1000キロワット時)。棒グラフは発電コストの範囲、線グラフと数値は加重平均を示す。
下のほうの地色が変わっている部分は火力発電のコスト範囲。出典:スマートジャパン太陽光発電がコストを下げた主な原因は
①大量生産、大量販売
②モジュールの変換効率改善
であった。
今後とも更に太陽光発電のコストダウンは続くと予想できる。その根拠は、
①系統接続問題がPVSSで解決される
②さらにモジュールの変換効率は向上する
③さらに大量生産、大量販売が続く
太陽光発電がコストダウンしたからといって、直ぐに電気料金が安くなる訳ではない。何故なら、FIT制度の下に太陽光発電を始めた人たちは、20年間、単価を変えることなく買い続けることを信じて発電事業に投資した。その単価 が生き続けている間は、電気料金に影響を与え続ける。
FIT制度の電源だけでなく、その他の電源の影響も大きい。
電源構成を変えたら、どの程度電気料金に影響を及ぼすかをシミュレーション
した。そのシミュレーション結果を下記の表に掲載した。
(4)コストダウンは電気料金にどの程度影響するか?
(5)太陽光コストダウンの影響
上記シミュレーションから分かったことは、太陽光の影響で電気料金を半値程度まで下げるには、安い太陽光を大量に導入しなければならない。大量とは、電源の内、半分程度を安いコストの太陽光で構成しなければその効果は出ないことが読み取れる。(単価の安い太陽光Ⅲが電源の60パーセントを占めるようになれば、合成単価は9.23円になる)
太陽光発電の総コストが下がる事による影響は電気料金の値下げだけでなく、他の多くの点に影響を与える。その影響度を分析してみよう。
コストダウンの影響①===>電力自由化による電力会社間の顧客取り合いの競争が激しくなる
早期に太陽光発電を大量に導入できた地域から電気料金を下げることができる。下げた単価で、他所の地域に電気を売り込むことができる。太陽光をまだ大量導入していない地域は電気料金を下げることが出来ないので、その地域の需要家は安い地域の電気を販売する新電力と契約することになる。
太陽光を大量導入していない電力会社は経営困難に陥るのは当然の成り行きである。
コストダウンの影響②===>電力会社自体の利益率向上に役立つ
コストダウンしたすべてを料金の値下げに利用する必要は無い。
ダウンしたうちの半分だけ値下げに適応し、残り半分は電力会社の利益向上に使えばいい。
福島原発の廃炉費用が膨大になり、その費用を国にお願いしようと動いているが、国にお願いする前に、大量に太陽光を導入して、シッカリ利益を確保して廃炉費用に充てるべきである。
太陽光でコストが半分になれば5兆円の売上のある電力会社なら、
年間で2兆円の廃炉費用を捻出出来るのではないだろうか?
コストダウンの影響③===>原発の40年延長が困難となる
原子力発電所の運転期間を40年に限定する40年ルールがある。
40年超過に対しては、原子力規制委員会の認可を受ければ1回に限り20年延長が認められることになっている。
稼働可能な原発全てに対して40年ルールを適応した場合、原発の
発電能力がどのように減少していくかを集計したものが図10.7である。この図から分かることは、新規建設もなく、20年延長もなければ30年代には原発が完全に消えていくことである。
しかし、重要な事は太陽光発電の総コストが20年頃には原発単価と同程度になり、さらに時間がたつにつれ太陽光の単価はもっと安くなるということである。
25年以降に20年延長を考えるとき、原発は太陽光との価格競争に勝てないので、太陽光との価格競争に敗れて、自然にフェードアウトする事になる。
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