投資効果の高い蓄電池容量を選択
Ⅳ. 投資効果の高い蓄電池容量を選択
ハイブリッド・バッテリー・システムを使用するためには、接続するソーラー・パネルで
発電する一日分を蓄電できる容量の蓄電池が必要となる。
そこで、接続しているパネルの一日の発電量はいくらになるか?
一日の発電量がどのようになっているかを見てみよう。
図4.15は神奈川県に設置された13MWの太陽光発電所が1年間365日に発電した日別発電量を
降順に並べたグラフである。
このグラフからわかることは一日の発電量は、年間で365種あり同じ発電量はほとんどない。
最大発電量は90,860kWhで、最少は0kWhであった。
発電量をグラフにすると「緩やかなS字カーブ」になっている。
1年間に1度しかない最大発電量を蓄電できる容量にするか、もう少し少ない容量にするかを
決めること(カットラインを決める) は、投資効率の観点から重要である。
(図4.15)
★7000kWの太陽光発電に対する最適蓄電池容量を考察する
発電容量7000kWの発電所の発電実績を見ても「緩やかなS字カーブ」になっていることが
分かる。この容量に対する投資効果の高いカットラインを決めるための分析を行う。
(図4.16)
カットラインの選択
最大の一日の発電量(カットライン)を5種類設定する。(図4.17)
決めたカットラインを24時間かけて放電するときの時間当たり放電量を計算する。
24時間放電量/時① = カットライン ÷ 24
カットライン毎にカットされる発電量を計算する。
カット分発電量② = 年間発電量①の内、カットラインを超える発電量
カットライン毎にカット率を求める。
カット率③ = カット分発電量② ÷ 年間発電量①
ハイブリッドバッテリー・システムの容量を計算する。
必要HBBS容量④ = カットライン × 1.33*
(*)「ハイブリッド蓄電池システム」の効率を数理モデルで検証 を参照ください)
ハイブリッドバッテリー・システム容量の削減率を計算する。
HBBS容量削減率⑤ = (最大日発電量(51,897) - カットライン) ÷ 最大日発電量
投資効率最大の蓄電池容量の決定
経費や販売収入を入力して粗利益を計算し、どのカットラインが最高の収益となるかを
検討する。
将来、FIT制度そのものも大きく変化する。当然、買取価格大きく変わってくる。
また、パネルや蓄電池も大きく進化し、価格も激変する。
そんな激変の中で蓄電池の容量が利益とどのように関係するかを見てみよう。
(1)買取と経費の単価の設定
将来の価格を見据えて下記の単価を設定する。
FIT買取単価 = 15円/kWh
パネル導入単価 = 16万円/kW 、蓄電池導入単価 = 3.5万円/kWh
(2)計算式
20年間収入⑧ ⇒(年間発電量②-カット分発電量③)× FIT買取単価 × 20年
パネル導入費⑨ ⇒ パネル容量(7000kW)× パネル導入単価
HBBS導入費⑩ ⇒ HBBS容量⑥ × 蓄電池導入単価
工事負担金⑪ ⇒ 47000渇ライン以下の場合、時間当たり放電量が2000kW未満
であるため、接続変電所が配電変電所となる。
2000kW超過(50000CutとCut無し)の場合は、中間変電所接続となるので、
変電所までの距離が遠くなることと使用機器が高圧になるため、負担金が激増
する。
20年間運転維持費⑫ ⇒(パネル導入費⑨+HBBS導入費⑩)× 維持比率 × 20年
蓄電池補助金⑬ ⇒ MAX1億円
20年間粗利益⑭ ⇒(20年間収入⑧ + 蓄電池補助金⑬)- (パネル導入費⑨ +
HBBS導入費⑩ +工事負担金⑪ +20年間運転維持費⑫)
20年間粗利益率⑮ ⇒ 20年間粗利益⑭ ÷ (20年間粗利益⑭+HBBS導入費⑩ +
工事負担金⑪ +20年間運転維持費⑫)
(3)計算結果の評価
☆投資効果が最大となる最適カットライン
カットライン35000kWが粗利益額も利益率も最大となる。
35000kWは発電容量7000kWの5倍である。当分の間、最適蓄電池容量は
太陽光発電容量の5倍として採用する。
☆赤字になるカットライン
カットライン47000kWでは、蓄電池のコストが負担となり赤字となる。
☆系統接続工事負担金の影響
50000kW以上のカットラインでは、24時間放電量が2000kW以上となるため
中間変電所接続となる。変電所までの距離が遠くなることと使用機器が高圧
になることで、負担金が激増する。
☆出力抑制の影響
ハイブリッド・バッテリー・システムを使用すると出力抑制の対象にならな
い。
☆最悪カットライン
カットラインは47000kWhは発電量は多くなるが、蓄電池コストに耐えられ
ないため赤字となる。ただし、売電価格と蓄電池コストの比率が変わると
必ずしも赤字となるとは限らないので注が必要である。
次へリンク ⇒⇒ 系統接続工事負担金大幅減少