東京電力に出力抑制はあり得ない・・・
って本当?
そんな悠長なことを言っている時ではなくなった。
東京電力は、風力なら出力抑制になりにくいと言って、
東電自体と、発電業者も含めて、
数年後には、風力が80倍近い3400万kW、太陽光が3倍の3600万kWとなる。
これら全てが稼働する数年後は、
東京電力が効果的な抑制解消技術を持たないため、出力抑制激増で、
発電業者は、60パーセント以上の売電収入減となり、
太陽光と風力の発電業者の倒産が多発する。
(多くの発電業者が倒産しても、電力会社や経産省にとっては痛くも痒くもない。
彼らの反応は、「無制限、無保証」を盾に、発電業者に責任があると決めつけてくると予想できる)
Ⅰ.プロローグ
風力発電は、太陽光のように南中時に発電が集中する事がないので、需要超過には成りにくい。だから、出力抑制として発電停止を命じられることは少ないと、固く信じておられる方は、まずこのプロローグをお読みください。
風力は太陽光より出力抑制になる確率は大きい。
理由1.太陽光が供給過剰になると、共犯として風力も出力抑制の対象となる。
太陽光が発電する昼間は風も必ず吹いている。風力が極めて少ない時もあるが、風力の発電は僅かであっても存在している。
現在東京では供給過剰にはなってないが、近いうちに導入を予定している太陽光のすべてが発電し始めると、ほぼ全日供給過剰になる。その時は風力も驚くほど導入されるので、太陽光に合わせて風力もほぼ毎日出力抑制の対象になる。(図1)
太陽光が供給過剰になると風力も (図1)
理由2.夜間、特に深夜は電力需要は昼の半分以下になる。しかし、深夜にもベース電源は止まらないので、再エネの導入余地は少なくなる(図2)
それに反して、風力は昼より夜間のほうが強いことが多いで、発電量が多くなる傾向がある。
図2は東京電力の2019年度の需給実績から、季節別時間別需要量を表示したものである。これを見ると需要が最大となる夏ピーク期の最大需要量は、15時ごろに発生した5543万kWhであった。その日の最低需要は、早朝の2971万kWhである。需要の少ない6月の最大需要は約4000万kWhであったが、最低はピーク日とさほど変わらない2590万kWhであった。
5月ゴールデンウィーク期間は最大値がピーク日の半分以下であるのに、最低はピーク日より少し下回るだけだ。
ここで言いたいことは、1年を通して最低需要は早朝時間帯に同程度の量であると言うことである。
ところが、常に発電している火力などのベース電源が2000万kWh程度あり、最低でも昨年1年間は1355万kWhであった。
そのベース電源の上に風力の発電が上乗せされるので、早朝の時間帯は、簡単に最低需要を超過することになる。
夜間は需要が少ない上にベース電源あり (図2)
結果を先に!!
①全体の停止回数
数年後には風力は80倍近くに増加する。太陽光も2倍以上に拡大される。
その時の稼働をシミュレーションしたので、その結果の中から、月別抑制回数だけ先にお見せする。
年間の抑制回数は319回となった。これは、東京管内の殆どの地区が曇りか、雨が降っているとき以外は、抑制対象になると解釈できる。
太陽光が原因で抑制になる昼の回数が306回で、この時、風力も抑制になる。風力だけ抑制対象となる夜間の回数は257回であった。昼と合わせると1年間で563回の抑制になる。365回より多いということは、昼と夜の2回停止させられることが頻発することを意味している。
②1発電所当たりの停止回数
1太陽光発電所の停止回数は、116.8×1.48で173回となる。
1風力発電所の停止回数は、昼の停止が116.8×1.48の173回で、夜が100.3×1.48で148回で、合計321回となる。
(1.48倍する理由はⅡの②1発電所の停止回数で説明します)
(図3)
③1発電所当たりの売電収入の影響
☆太陽光の場合
太陽光に対する出力抑制は、東電管内全域が晴れている場合はほぼ間違いなく抑制される。逆に、全域が雨の場合は、発電量も少ないので出力抑制になりにくい。
一方、太陽光の一日の発電量はゼロから容量ぎりぎり一杯に発電することがある。発電量の種類は365種類あるといってもよい。図4は一日の発電量を多い順に並べたグラフである。多いものから90個の合計は年間発電量の38パーセントを占めるが、少ないものから90個を集計すると年間の10パーセントにしか過ぎない。
出力抑制で年間180回も発電停止になると、最大で68パーセントの売電収入が減少すると考えるべきである。50パーセントでは無い事にご注意。
(図4)
(注)経産省ご推進のオンライン制御とオフライン制御の違いについて
オフライン制御は前日の内に天気予報などから翌日の発電量等を予測し、供給過剰になりそうだと判断したら、前日の内に「明日は、朝一から日没まで発電を停止してください」と指示し、当日現場の方が、手作業で発電を停止させるやり方。オンライン制御は当日発電中に供給過剰になりそうであると制御室が判断した場合に限り、停止させる発電所を選び、オンラインで停止させるやり方。オンライン制御だと停止時間が短くて済むといわれている。
しかし、しかし、オンライン制御の効果があるのは太陽光の導入容量が少ない時であって、導入量が2倍や3倍と増えると、供給過剰になり始める時間が日の出直後から始まるので、オンライン制御はオフライン制御とほとんど変わりなくなる。東電の太陽光は現在1433万kWであるが、今後承認済みと検討申込のすべてが稼働すると、太陽光の容量は2.5倍の3624万kWになる。その時はオンライン制御は、単なる飾りに過ぎなくなる。
☆風力の場合
風力に対する出力抑制は、風が原因で停止するより、太陽光の影響や夜中の火力などのベース電源の稼働状況で抑制となる。皮肉にも風任せではない。また、夜間の停止時間はその日の状況に左右される。
したがって、年間売電収入に対する影響度合いの計算は別の方法に頼らざるを得ない。それは年間の発電量に対する年間抑制量の比率を適応することである。
Ⅱ.九州本土の先行事例
東京電力の出力抑制の将来予測を語る前に、出力抑制先進国である九州電力の実施状況を、九州電力が公表した資料で説明しておく。
参照 ⇒⇒ [速報]九州本土はこれまでに98回の出力抑制。一つの発電所は24回停止。将来
①月別抑制実施回数
2018年10月に第1回目利出力抑制が実施されてから、3月末までに98回実施された。2019年6月から9月まで実施されなかった原因は、電力需要が夏ピークで増えたことと、4基の原発が定期点検で次々と停止したことで、出力抑制にならなかった。
(図5)
②1発電所の停止回数
公平の原則に乗って各発電所に停止命令が出された。(図6)は実施実績を抑制ルール区分別と発電所の規模別に九電の報告である。
旧ルールで契約した高圧の発電所は24回となっている。
停止回数を計算するには図4の「制御された率」から計算できるが、ここで読み取れた重要なことは、その「率」と実施回数に乖離があることである。「率」は16.17とあるから16~17回と解釈すべきであるが、実際には24回の実施であった。
したがって、「率」×1.48が正しい停止回数となる。
乖離が生じる理由は下記の「詳細」に記載してます。
(図6)
Ⅲ.東京電力に出力抑制がどの程度発生するか?
1.シミュレーション基本事項の設定
(1)東京電力の再エネ導入量はどれだけ増えるか?
東京電力公開情報(図7)によると太陽光が3624万kW、風力が3421万kWとなる。
(図7)
(出典)東京電力(図面をクリックすると拡大できます)
(2)予測対象期
接続検討申し込み済みの全てが稼働した時の再エネ化率等をシミュレーションする。
(3)シミュレーション環境設定
シミュレーションは下記の点に注意して行った。
●東京電力の2019年4月から翌3月までの需要実績をべースとする。
●1時間ごとに同時同量を成立させる
●1年間同じ気象条件とする。太陽光も風力も同じ比率で発電するものとし、同時刻の再エネの発電量は新と旧の比率を乗じて求めた。
●再エネの導入容量は1年間通して、現接続済と同じ容量とした。
●出力抑制には火力発電の下げ代が大きく響くが、現在実績1355万kW 使用した。揚水動力の最大値は903万kW、揚水発電は775万kWとした
●東京も供給過剰になったので、他電力の供給過剰分を引き受ける事は出来なくなった。連携線は東電の再エネが東北方面から送られてくる地産都消として利用する。
●原発は近いうちに柏崎の2基が稼働するとして270万kWを追加した
●実績の風力は陸上風力である。しかし将来は洋上風力が主力と推測しているが、陸上風力の実績データーを利用した。
(陸と海では風力発電効率にかなりの差がある)
2.出力抑制処理
シミュレーションは東京電力のHPから2019年度の電力需要実績を、EXCELシートでダウンロードし、1時間毎の電力需要と電源別の発電量を使用して忠実に同時同量を守りながら計算した。
(1)前処理
発電日の前日または当日の早朝に天気予報などから需要予測、発電予測を行い時間ごとの需要と供給のバランスをチェックして、供給過剰なら発電所に発電停止を命じる。
計算手順は( 図8)の項目名を使用して説明する。
①前年度の再エネの発電実績から種別ごとに発電量を計算する
(再エネ種別毎に前年発電量×再エネ種別容量の倍率)
②同時同量欄に表示される方供給過剰分を、火力の出力で調整する。調 整結果が1355万kW以下の時は1355万kWに置き換える。
③供給過剰が1000万kW以上は、揚水動力を903万kWを適応し、過剰分を少しでも減らす。
④残りの供給過剰分を出力抑制量とする。
⑤出力抑制が必要なすべての時間に対して各時間ごとに抑制率を次の式で 求める。
抑制率 = 抑制量÷(太陽光発電量+風力発電量)
⑥時間帯ごとに最大抑制率を見つける。
時間帯とは、
昼時間 ;太陽光発電 開始から発電終了まで、
夜時間 ;太陽光発電終了から翌日の発電開始までの抑制量を計算する。
その時間の太陽光と風力の発電量× 時間帯の最大抑制率 × 1.4
(図8)
(2)後処理
前処理で求めた実抑制量を反映して、有効発電量と実抑制量を所定の欄に反映させる。
①太陽光と風力のそれぞれに対して、前処理で計算した新抑制量から新発電量を求め、旧発電量と旧抑制量を 置き換える
新発電量=旧発電量―新抑制量
新抑制量を抑制量欄に移動
②同時同量欄に新抑制量が表示される
新揚水=旧揚水+新同時同量
③完了
(図9)
3.予測結果
(1)総括-再エネの主力電源化は一歩及ばず、代わりに出力抑制頻発―
原子力と火力を合わせて56.6パーセであるため、再エネ化率は水力( 4.6) を含めて43.4パーにしかならない。その内11.0パーは地産都消で得たもので、ご当地だけの再エネ化率は32.4パーである。
太陽光と風力は発電しても半分は捨てられる。ご当地で、10年間も出力抑制の心配もなく、順調に売電収入を得ていた太陽光発電業者も、出力抑制で等しく減収となる。
(図10)
(2)月別電源別発電内訳
1年間の月別需要と電源別発電量である。
(図11)
(3)はたして再エネの主力電源化は実現できたか?
太陽光が3641万kW、これは導入量第2位九州の1635万kWの2.2倍。風力は3412万kW、これは第2位東北の1371万kWの2.5倍。
これだけ導入しても再エネ化率は、水力を含めて43.4パーセントにしかならない。この数字では、再エネが主力電源でありますとは胸を張って言えない。
主力電源になれない最大の原因は、余りにも出力抑制が多過ぎることだ。仮に、抑制として捨てられた量(発電させてもらえなかった量) が全て有効化出来れば(発電させてもらえれば)、再エネ化率は62.8パーセントなったはずだ。勿体ないことだ。
今後、出力抑制を解消せず太陽光や風力を増やしても、抑制として捨てられるだけで、再エネ化率を高めることには貢献できない。
なお、抑制解消に経産省ご推薦の連携線拡大やオンライン制御は、何ら役立たずであることは、当サイトで何度も何度も説明している。
(4)太陽光と風力の発電量と抑制量
太陽光と風力の月別発電量と抑制された量だけをグラフ化したものが 図12である。この図で分かることは、いかに捨てられる量が多いかということである。
(図12)
(5)洋上風力と陸上風力の違いにご注意
今回のシミュレーションは、風力はほとんどが洋上風力であろうと推測したが、発電量計算には陸上風力の実績を適応した。洋上風力の実績データーを入手できなかったからが理由である。
一説によると、洋上の発電効率は陸上の2倍あるといわれている。
もし、本当に2倍あれば、今回のシミュレーション結果は大きく変わってくるか?
結論から言うと、発電量が2倍になっても、増えた分の殆どは出力抑制となるだけだろう。
洋上風力は導入コストも高いが、FIT価格も36円と太陽光の3倍も稼げるから、すぐに元は取れると高を食っていた業者も、ここまで抑制が多いとは夢にだに思っていなかっただろう。
3年後、我々の説が正しかったと後悔されても後の祭りである。
Ⅳ.出力抑制の完全解消は可能か?
(1)太陽光の抑制を解消すると、風力も自動的に解消する
①抑制解消対策がない場合
現在可能な抑制解消技術、すなわち揚水動力とオンライン制御を適応して、出力抑制を少しでも解消した後の稼働図が(図13)である。
連携線は適応していない。何故なら、近い将来に日本全国が供給過剰状態に陥るので、他所の余剰分を引き受ける余裕は、全地域で無くなるからである。ましてや、日本一大きい東京の過剰分2000万kWは、東北電力1社分以上に相当するので、とてもじゃないが引き受けられませんということである。
(図13)を見ると太陽光は7日間の全日で需要を超過している。その超過の上に風力がのしかかっているので、風力も出力抑制の対象になっている。夜間を見ても、7日間のうち5日は供給過剰である。
過剰分に対しては、太陽光と風力の発電量に比例した抑制処理されている。
毎日が太陽光と風力が供給過剰 (図13)
②太陽光だけにHBBSを使用する。
まずは太陽光の供給過剰を解消すれば、風力はそれにつられて自動的に供給過剰が解消される。太陽光にだけHBBSを適応する。(注*)
HBBSを使用すると南中時の高さが4分の一近くまで少なくなるので需要超過が無くなる。同時に風力分も一緒に少なくなり、両者とも出力抑制にならなくなる確率が高い。
風力は日没後に風が強くなる傾向にあることと電力需要が少なくなる事と、HBBSからの24時間放電分が夜間にもあるので、需要超過になりやすい。またHBBSを使用すると天気予報を使用して発電予測を行う必要がなくなり、予測誤差が生じないため安定化した運用が出来るようになるので、火力発電の運転が楽になる。安定化効果として火力の下げ代を一段と下げる事が出来る。HBBS使用前の火力の下げ代は1355万kWであったが、HBBSでは1000万kWまで下げる事にした。
(図14)では太陽光の供給過剰は完全に無くなり、風力も昼の供給過剰も殆ど無く、夜に少し残っているのが分かる。
(図14)
(注*)自己消費のある家庭用とすでに導入済みにはコストの問題で適応は無理がある。 しかし、ここではシミュレーションの都合上すべての太陽光にHBBSを適応したとして計算していることをご了承ください。
参照 ⇒⇒ 遅すぎる蓄電池投入、出力抑制頻発で再エネ化率は上がらず、
(2)再エネ化率100パーセントの実現は「エネルギー革命」へと繋がる
①火力発電の下限値をゼロまで下げる
前述(図14)の出力抑制を解消するには、揚水動力を能力いっぱい稼働(図15)では10月5日の0:00~3:00まで火力の出力をゼロにしている。
同様に、7日の0:00近辺と9日の0:00近辺でゼロ近くまで下げている。
なぜ、下げるだけのことができないのか?車の運転でスピードを上げるのは大変恐怖を感じるが、スピードを落とすのはいたって簡単である。
何故火力発電では出力を下げることが困難であるのか?
電力会社の系統制御担当者の苦労話を聞くと、下げることが難しいのではなく、下げた後、急激に上げることが難しいそうだ。
(図15)の10月5日の場合、ゼロ時過ぎからその日の12時までに2000万kWも上げなければならない、極めて困難なことだそうだ。
最近の火力発電装置は1機当たり50万kW以上の能力を持っている。
2000万kWの立ち上げには40機程度を、6時間の間に完璧に行わなければならない。
立ち上げが困難なもう一つの理由は、1機の発電機立ち上げ時間が、発電機の種類によってそれぞれが異なっている。早くて2~3時間、長いと24時間かかるものもある。
また待機状態にも依存する。例えば、アイドリングしながら待機しているか、まったくアイドリングせずに待機しているかでは、立ち上げ時間が異なる。
結論から言うと、下げ代を下げるとその後の立ち上げが難しくなる。
だから、止めなければ立ち上げで苦労しなくて済む。
少々、出力抑制が増えるがやむを得ない・・・としている。
(図15)
Ⅴ. 再エネ化率100パーセントを実現する
再エネ化率を高めるために、単に下げ代機能だけに注目するだけでなく、
来るべき新時代を目指して、「エネルギー産業革命」の推進に挑戦する。
そのためにも再エネ化率100パーセントを実現する。
(1)設計思想
再エネを安定化した形で、100パーセント供給するためには確たる設計思想が必要である。
その思想は、「安定給電を保障する」である。
系統接続可能性と、天気通りの発電ができることを保障する。
天気に左右されない量を供給し、需給バランスの維持も保障する。
都会に安い電気を地方並みに供給と、地方の活性化をも保障する。大災害発生時の停電等に対しても安定化して大量供給を可能とする。将来の電気自動車時代の電力需要に対しても再エネだけで供給する。
再エネの電気から液体水素を作り、国内と海外へも供給可能とする。
(2)システム構成
系統制御システムと連携しながら、HBBSを制御する。
発電終了時に各HBBSからその日の発電量を受け取り、翌日の稼働計画作成へ知らせる。発電実績から稼働計画を作成するので太陽光の発電予測は必要なくなる。
翌日の稼働計画が実行開始する時刻(午前零時)から前日発電分の放電を開始する。放電は24時間かけて毎時均等量が放電される。
再エネは天気に左右されるので不安定だと言われているが、不安定なのは日単位に見るからである。1年単位で見ると毎年同じようなパターンで発電している。そのパターンを事前に登録しておき、毎日の発電量と比較し、パターンより多い時はグリッドストレージに保存し、足りない時はグリッド・ストレージから補充するので、安定化した量が得られる。
この機能によりバックアップ電源は不要となる。また同時に、この調整機能により、火力発電の調整力に頼らなくてもよくなるので、再エネ化
率100パーセントの実現が可能となる。 (図16)
(3)グリッドストレージ
それではグリッド・ストレージの容量はどれくらい必要であるか?
また、その容量はどのように変化するのだろうか?
東京地区で太陽光が発電する1年間の発電量を10日(旬)毎に36旬を事前に設定し、それを基準に、実際の発電量との差をグリッドストレージで調整した場合、どの程度の量が底にたまるだろうかという観点でシミュレ ーションを行った。
(図17)はシミュレーション結果の3か月分である。3か月間の最大蓄電量は54000GWhで、最少は47000GWhであった。これらの量は東京電力の2~3か月の需要に相当する。
将来、火力発電を全廃してもこのグリッドストレージから2~3か月は供給できる。その時再エネ化率100パーセントが実現可能となる。
近いうちに、直下型大地震や、買って経験したことのない台風などで数日間の計画停電を余儀なくされたときにも、このグリッドストレージが働いてブラック・アウトを避ける事ができるだろう.
グリッドストレージに保存された電気量の変化 (図17)
(4)「エネルギー産業の革命」をもたらすグリッド・ストレージ
4万~5万GWの容量の蓄電池確保は出来るのか?疑問に思う。
その疑問に答える前に、前述の(図17)を見て頂きたい。
グラフの中には2本の線がある。一つは黒の太い線で、もう一つは赤の実線である。黒の線は全蓄電量の変化を表している。その変化はゆったりとした変化である。もう一つの赤線はその日の変化を表し、可なり激しく日毎に変化している。その変化は時間当りマイナス30GWからプラス30GWの範囲で変動している。グリッド・システムの全体像が(図18)である。
そこでは、ゆっくりと変化する大容量は液体水素に変えて大きなタンクに貯蔵する。そのタンクは火力発電所跡地を利用する。
日々激しく変化する赤線は銃で放電が容易な蓄電池を利用する。蓄電池以外もEV車用の燃料スタンドも蓄電機能の一部である。
このグリッドストレージの導入によって、エジソンの電気発明以来築き上し、電気は上流から下流への流れが、フラットな流れいわゆるマイクログリッドに変化していく。
これまでは「電気は貯める事は出来ない」の常識が、これからは「貯めてから使う」時代に変わっていく。
この大きな変化をもたらすのがグリッドストレージだ。
この変化が「新エネルギー産業の革命」である。
(図18)
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