2030年度に、再エネ化率、
36~38%は実現可能か?
実現と同時に、
出力抑制の大津波が列島を襲う。
2021/8/16 2030年度に、再エネ化率、36~38%は実現可能か?
実現と同時に、出力抑制の大津波が列島を襲う。
経済産業省は、エネルギー基本計画改正案の素案を公表した。
それによると、2030年までに
原子力 ;20~22パーセント、
火力;41パーセント、
再エネ;36~38パーセント
を実現するとしている。再エネは、その前に・・・・・。
Ⅰ.2030年までに全てが稼働した時、再エネ化率は?
(1)現在稼働中容量と受付中容量
現在稼働中の再エネは日本全国合わせて104.5GW。
現在の再エネ化率は19.3パーセント。
これが10年以内に、新たに160GWが導入される。
そのすべてが稼働した時、
目標の再エネ化率は達成できるか?
現在(2021/4)電力各社別の再エネ種別毎の稼働中及び受付中容量は(図1.1)の通りである。稼働している再エネは104.5GWで、その内6割近い61.3GWが太陽光となっている。水力が20.9GWで第2位である。風力は僅か4.5GWで太陽光の15分の一にしか過ぎない。
未稼働案件は、既に承認されているものと承認前の検討中の2種類に分かれる。
受け付けている内容を見ると、相変わらず太陽光は多い。現在稼働中太陽光の8割に匹敵する48GW受け付けている。その中で既に承認されているのが半数の24GWで、検討中も同じ24GWとなっている。
未稼働案件の中で太陽光より多いのは風力で、太陽光の2倍の容量、102GWである。その中で既に承認されたのが21GWである。検討中が81GWもある。102GWは現在稼働中風力の25倍と驚異的数値となる。検討中は承認されない確率が高いので、2030年の予測では、検討中は半分が承認されるものとして計算した。
(注)風力発電には洋上と陸上の2種類があるが、電力会社が公表している数値には洋上と陸上の区別が表示されていないので、全て陸上として計算した。
もし、洋上が多数あれば、発電量は倍近く増えるので、出力抑制の回数はさらに増えるものと思われる。
(図1.1)
(2)全てが稼働する2030年の発電停止回数
予定されていた新たな再エネが稼働し始めると、日本全国で出力抑制が激増する。その様子を、年間の抑制化数の多い順に並べると(図2.1)の通りである。
一番停止回数が多いのが北海道、年間昼に292回、夜間が264回である。週7日の内6日は発電停止命令が出されると言う事になる。
第2位の四国から6位の九州までは、年間200回以上の停止で、週4回以上の停止となる。
停止回数の少ない第7位の北陸と8位の中部の停止回数は、現在の九州の停止回数と同程度である。
9位の関西は、原発の稼働が日本で一番多く、全発電量の半分を占める。従って再エネは残りの半分の中で稼働しなければならないので、出力抑制になりやすい状態にある。
詳しいことは、関西電力、美浜原発と高浜原発の再稼動認可で西日本の電気の流れを変える。参照ください。
(図2.1)
どうしてそんなに停止させられるのか?
停止原因を見てみよう。停止回数の多い北海道と東京の1か月間の稼働状況を見れば、停止は当然と思える。
北海道の2030年5月1か月間の稼働予想図は(図2.2)の通りである。
この稼働図は2020年5月の北海道電力の発電実績値に対して、2030年の再エネ量を適応して作成した。2020年の実発電量に対して、将来の再エネの伸び率を乗じて作成した。
この稼働は出力抑制対策として揚水発電を十分に働かせているが、超過分を連携線で送信はしていない。送信しなかった理由は北海道以外の全電力会社は同時刻に供給過剰になっており、他電力の分を受取る余裕はないからである。
揚水発電の対応後に需要曲線(赤破線)超えていない日は2回だけで、太陽光だけでも超えている日は22回ある。
(図2.2)
東京もの場合を見てみよう
東京も風力が大幅に増えるが、北海道程ではない。東京は北海道より需要が約10倍以上多いので、火力発電の出力調整でかなりの調整ができる。しかし、太陽光の比率が北海道より遥かに多く、太陽光が原因で供給過剰になることが多い。
(図2.3)
(3)売電収入はいくら減るか?
発電禁止になる事の最大の問題は、発電業者の売電収入が減る事だ。
減り続けると発電事業を継続させるための経費すら払えなくなり、倒産せざるを得なくなる。発電禁止が出始めると、永遠に発電禁止が続き、永遠に回復する見込みは有り得ない。
売電収入の減少率は、思っていたより大きくなることが痛い。何故大きくなるかを説明する。
太陽光発電の一日当たりの発電量は、1年間で365種類あると言っても過言では無い。同じ発電量は、1年間で1度しかないと言える。その1年間の発電量を多い順に並べると(図2.1)のような「緩やかなS字曲線」が出来る。この曲線は関東地方で稼働している発電所の実績から作成している。
出力抑制は供給域全域が晴れると、出力抑制になる確率が高い。逆に全域が悪天気であれば、抑制される確率は低い。
別の言い方をするとS字曲線の多いところ(左端側)は、抑制で発電させてもらえない確率が高い。逆に右端側は抑制される確率は低い。
従って出力抑制で売電収入が減少する率は、S字曲線の左端から計算すべきとなる。例えば、年間は90回停止した時は、360÷90=4で、4分の一の25パーセントでは無く、(図2.1)の「抑制回数」90欄の「減収率」は38パーセントになる。この38は最大値と考えるべきである。つまり、30~38パーセントの減収率と考えるべきであるろう。
(図2.1)
(4)2030年度の電力会社別月別停止回数
①即死グループ
売電収入の50~80パーセントも減収になるため、
即死してしまうグルーブ。北海道、四国、東京の3社。南無阿弥陀仏。
(図4.1)
②重症グループ
売電収入の半分近くが得られなくなるため、しばらくは悪あがき後、
お陀仏となるグループ。中国、東北、九州の3社。
(図4.1)
③予備軍グルーブ
一寸再エネ導入が増えただけで、上のグループに移行するグループ。
北陸、中部、関西の3社。
(図4.1)
(5)全体の再エネ化率は?
①再エネ化率目標値36~38%は達成できたか?
肝心な2030年度の再エネ化率は、目標の36~38%は達成できたか?
答えは「ほぼ達成」である。35.2パーセント(図3.1)である。達成できなかった最大の原因は、太陽光と風力の発電に対して出力抑制が、想像以上に大きかったからである。
しかし、電力会社別に見てみると、目標値以上を達成しているところもある。
第1位が、北海道が69.8パーセント、第2位が59.8パーセントの北陸である。第3位が東北で、51.0パーセントである。
率だけ見ると北海道や北陸は高い率を達成しているが、電力需要は沖縄に次いで日本でも一番少ない地域であるから、ちょっと再エネを導入しただけで高再エネ化率が達成できる。ちなみに北海道、北陸、四国の年間電力需要は東京の10分の一程度である。再エネ導入量(21年4月現在)は東京の2497万Wに対して北陸は149万kWで16.8分の一である。北海道が461万Wで5.4分の一である。
北陸については、特殊事情がもう一つある。それは水力とバイオの率が極めて高いことである。即ち、水力が26.7パーセント、バイオが15.4パーセントで合わせて42.1パーセントもある。
再エネ化率と出力抑制の関係
予てから、再エネ化率が30パーセントを超えると出力抑制の頻度が激増すると、弊社は主張してきた。ただし、30パーセントは再エネが太陽光だけに限った場合であって、他の状況如何では20パーセントでも、10パーセントでも激増すると主張してきた。
その実例を見てみよう。
それは四国電力の例である。四国は、再エネ化率24.4パーセントにしか過ぎないのに、出力抑制の回数は北海道に次いで2番目に多い。年間241回となっている。
四国より再エネ化率の高い東京(40.2%)や東北(51.0%)より多いのである。
多くなる原因の第1は、年間需要に対とて原発と火力で75パーセント占めてしまうため残りの25パーセントの中で、水力とバイオが15パーセントを使用してしまうため、太陽光と風力には10パーセントの中で稼働しなければならなくなり、
供給過剰が頻発することになる。それが原因で年間241回の出力抑制となるのである。
(図5.1)
(6)再エネ化率は何処まで伸びるか?
★★★再エネの主力電源化は可能か?RE100は実現可能か?★★★
何の対策をせぬまま、再エネ導入を進めてもこれ以上、
再エネ化率は伸びない。伸びるのは、出力抑制で停止回数が増えて、
発電業者の倒産が増えるだけである。
何故、再エネ化率は伸びないかの理由を簡単に説明する。
理由①水で溢れたコップに、これ以上水を入れても、コップの水は増えない。
日本の再エネの率は太陽光6割で、将来ともこの傾向は続くので、太陽光中心に説明する。
電気は絶えず、需要=供給でなければならない。これを同時同量と言っている。この統合関係を崩すと、周波数が乱れたり、停電になったり事故の確率は極めて高 い。この同時同量を守るために、電力会社の系統制御室は1日24時間、絶えず監視制御している。前日中に需要予測と発電予測で大まかな対応を行い、当日は監視と制御を行っている。再エネの発電量が需要を超えると予想されると、前日の内から該当発電所に発電禁止命令を出す。禁止時間は午前9時から17時(?) までとなっている。
太陽光発電が最大に発電できるのは、(図6.1)の中でステップ1の白地部分である。この白地は24時間の需要量に対しては30パーセント程度となる。この時の再エネ化率は30パーセントと言う。
この30パーセントを超えた後は、太陽光の導入量を増や(ステップ2やステ ップ3の発電量)しても、採用されるのは最初のステップ1の発電量だけである。 だから再エネ化率30パーセントが最大となる。
30パーセントがコップに一杯の水が入った状態と言う。
従って、太陽光だけで再エネ化率を30パーセント以上にする事は、理論的にも不可能である。
(注)① 原子力や火力が発電していると30パーはもっと少なくなる。10パーや20パーでも、再エネは供給過剰になるので要注意である。
② 供給過剰分の対応として、揚水発電や連携線を利用して他電力に処理を依頼出来るが、揚水についてはその処理能力の限界がある、連携線は理由②を参照のこと。
(図6.1)
理由②日本列島は東西に狭い。だから、太陽光発電は、ほぼ同時刻に、北海道から九州まで一斉に、ほぼ同時刻に最大発電になる。その時刻に供給過剰分を他所にお願い出来ない。連携線の効果は全く期待できない。
2030年には日本全国の再エネの導入利用は、現在の2.6倍になる。太陽光も1.8倍になる。天気のいい日には、北の北海道から南の九州までが、ほぼ同じ時刻(南中時)に供給過剰になる。別の言葉でいうと、全員が助けてほしい状態になる。だから、誰も助けられないのである。
エリート集団の経産省や、西洋かぶれの似非評論家たちは、供給過剰は電力系統の容量を増やせば簡単に解消できると、今だに信じ込んでいる。我が国の再エネ主力電源化が再エネ業者の大量倒産で失敗に終わったとしたら、出力抑制対策を全くやらなかったことが原因になるが、その主犯は経産省や似非評論家の「日本全国一斉に供給過剰」の対策を考えなかったことに起因することになるだろう。
理由③風力は昼より夜の方が、発電量が多くなる傾向が強い。しかし、夜の電力需要は昼より少ないので、夜間の風力は供給過剰になりやすい。
昼が供給過剰で発電出来ないなら、夜、頑張れば良いと考えるのは浅はか過ぎる。何故なら、夜の需要は昼の半分以下で且つ、これ以上下げる事の出来ない原発や、火力の最低出力や、止める事が困難なバイオ、水力、地熱が集中しているので、太陽光や風力が割り込む余地が全くないのである。(図6.2)にはその状況が表示されている。 このグラフは東京電力の2019年の実績から作成したものであるが、それを見ると、8月の昼の需要は5543万kWh であるが、その日の午前3時の需要は2971万Wと、昼の半分近くまで落ち込んでいる。それに対して火力発電の最低出力が1355万kWhもあり、需要との差が1600万Whしか無いが,その中に止める事が困難な原発、バイオ、水力、地熱が割り込んでくるので、風力が入り込む余地が殆ど無いのである。ちなみに東京電力では現在受け付けているものなどすべて含めると風力だけで3900万Wも風力を受け付けている。風力は昼より夜の方が発電量が多い傾向にあるので、殆ど毎日が発電停止の対象とならざるを得ない。
(図6.2)
経産省の審議会では、2030年度のエネルギー計画では電源別の発電率しか議題にしていない。即ち、原発20~22パーセント、火力41パーセント、再エネ36~38パーセントしか議論しない。再エネ化率を達成してもその裏で大変な問題が発生することは、一言も触れていない。
触れていないので一般の人たちは、目標達成出来ればそれでよし、他に何ら問題なしと思ってしまう。現に、メディアも、メーカーも、発電業者も、何ら問題なしと思っているようだ。
Ⅱ.出力抑制は解消出来る
太陽光発電はまるでタケノコのように、上へ上へと伸びる。
上に伸びるタケノコを横に寝かせると、供給過剰は完全に解消する。
(1)HBBSの機能概要
1つの発電装置に1組の蓄電池を接続させる。1組とは任意の数の蓄電池で構成され、接続された発電装置の一日当たりの発電量を収容出来、かつ放電と蓄電の同時並行処理が可能な装置である。(図4.1)
蓄電は発電装置で発電したものを、直接電力系統に送電せずに、一旦、蓄電する。
放電は、前日に発電した量を24分の一づつ均等に24時間かけて放電する。
放電開始時刻は、翌日の系統制御開始時刻(通常は午前ゼロ)で、終了時刻はその24時間後になる。 (注)自己消費を行う発電装置には適応できません。
(図Ⅱ.1)
(2)適応した場合の効果
①東京電力に適応した場合
HBBS適応前の稼働は(図2.3)である。適応前はほぼ全日太陽光が供給過剰になっており、需要ラインを超過しているのが分かる。 HBBS使用すると需要ラインを超過していた分が、24時間横に寝るため、超過しなくなっているのがこのグラフからわかる。
(図Ⅱ.1)
②適応後の発電停止回数
HBBS導入前は年間昼の停止回数は225回、夜は156回だった停止回数が、HBBS導入後は、太陽光はゼロ回に大改善された。HBBSは適応していない風力まで、昼が50回、夜が25回と大改善である。風力の各発電所は年間で昼が17.0回、夜が8.4回と売電収入減はほとんど無視できるほどに改善された。
(図Ⅱ.1)
③1年間の再エネ化率
年間の再エネ化率は40.2パーセントから、主力電源と言える51.3パーセントまで
高まった。
(図Ⅱ.1)
④HBBS効果の金額換算
東京電力1社だけでHBBSの17年間の経済効果は22兆円になるが、これを単純に電力10社に換算すると、17年間で66兆円と推定できる。
(3)太陽光発電業者にとってのHBBSコスト問題
"HBBS使用は、使用しない者より大きな利益を得られる "
理由①蓄電池とパネルの一体化で、共通コスト削減。例パワコン不要
②パネル電気を直流のまゝで蓄電するので、発電量が増加する
③系統接続電圧が4分の一になり、系統接続工事負担金大幅削減
④発電所大型化が可能、スケールメリット単価適応、利益率UP
⑤出力抑制が無くなるため、確実な利益確保が可能となる
⑥HBBSとパネルを含めたコスト(単価)は6.0円/kWhまで耐える
(4)系統制御を行う電力会社にとってのメリット
"経常利益が大幅UPで、株価まで高まる"
理由①太陽光発電のための発電量予測が不要となる。
②太陽光発電のための出力抑制に関する作業の全てが不要となる。
③太陽光発電を電力系統に接続させるための容量拡大の必要性が
4分の一程度に減少する。
④太陽光発電が日の出から南中時に向けての急増、南中時から日没ま
での急減が、一日中フラットな供給になるので、系統制御が極めで
安定化する。
⑤系統制御が安定化するため、火力発電の最低出力を大幅に下げる
ことが可能となり、再エネの導入量を大幅に増やす事ができる。
⑥火力発電の稼働時間が少なくなることで燃料費が大幅削減でき、
経常利益の大幅UPで、株価が急上昇する。
Ⅲ.最大の問題は、経産省も電力会社もメディアも、
出力抑制問題を取り上げていないことだ。
取り上げないから何の疑いを抱くことなく
発電業者はどんどん再エネを拡大してくる。
まさか、こんなに発電禁止になるとはつゆ知らず!!
出力抑制解消に本格的に取り組んでいるのは弊社だけ。
弊社のHBBSを太陽光発電に取り付ければ、
その装置には出力抑制は発生せず、
日本全体の再エネ化率は50.3パーセントに急増する。
(図Ⅲ.1)
HBBSは、再エネの最大コスト削減ツールになる。
HBBSは太陽光にのみ適応するようになっているが、
その効果は、太陽光のみならず、
風力にも、火力発電にまで発揮される。
その金額は、上記の例では、
太陽光が皮肉にも一番少なく、
火力発電が最大で、2番目が風力である。
太陽光発電業者だけがHBBSのコストを負担する
と言う矛盾は経産省が率先して解決すべきである。
最後までご精読ありがとうございます。ご質問、ご感想、反論等
ozaki@smart-center.jp まで直接お送りください。